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涙、涙。おめでとう、おめでとう。■2002年10月20日(日)

生徒には、子どもが出来ていた。

土曜の夜、電話で知らされた。

検査薬で2度調べ、いずれも陽性だったとのこと。





おめでとう。

僕がそう言うと、生徒は泣き出してしまった。

馬鹿、おめでたいのに泣くやつがあるか。

「…だって、急すぎて何がなんだかわからなくなって…。」

彼女はそう言うのが精一杯。

後はもう、涙、涙、涙。





彼女は今の気持ちを弱々しく語った。

堕ろすか産むか悩んだこと。

母親に報告したら、「子どもを育てようなんて甘い」とあしらわれたこと。

彼氏には、大学進学を駄目にして申し訳ないと謝られ、結婚しようと言われたこと。

自分がまだ子供なのに、子ども育てるなんて出来ない、学校もこのまま通う気になれない、親にも迷惑かけてしまう、と心配事を言い、また泣いた。





でも、産むと決めたんだもんな。君がその子どもを君が守らなくちゃ。いや、君一人じゃない、頼れる人がいるだろう?

「うん、嬉しかったことなんだけどね、彼氏は始めから私に産ませることしか考えてなかったんだ。」

よかったな。

「でも、受験できなくなっちゃった…。ごめんなさい…。」

彼女は泣いていた。

気にすんな、僕は嬉しいんだよ。

「あれー?妬いてないの?人のものになっちゃいました、えへ。」

咽(むせ)ながら、彼女は笑っていた。

僕もまた、逆転のチャンスはあると思ったんだけどな、とか軽口を叩き。





電話を切るとき、僕は、

おめでとう、本当におめでとう。

そう彼女に送った。





おめでとう、おめでとう。






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