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妊娠してるかもしれない。■2002年10月18日(金)

昨日の夜、近くの陸上競技場でジョギングしていた時のこと。

生徒から電話が来た。

僕は走るのを止めて電話に出た。





「もしもーし。」

鼻声だった。

こんばんは、具合良くなさそうだね。

「明日(金曜の指導)お休みにしてもらってもいーい?」

彼女は学校を早退し、内科へ行ってきたそうだ。

ここ半月ほど、彼女は体調を崩していた。

そして、

「私ね、妊娠してるかもしれないって。医者に言われた。」

生徒はそう言った。





え・・・?





「いや、別に決まったわけじゃないけど。また病院行ってくるけどね、今度は婦人科に。私、産もうかなあ?」





本当?

僕はあっけにとられていて、言葉が浮かばなかった。





「だから―、出来てるかどうかは分からないってば。」

僕の驚き様が気に食わなかったのか、生徒は面倒くさそうに答えた。

「ま、とりあえず父親は誰かな?ってところから始めないと。」

あほなこと言うな。

時期から判断して、僕ではなかった。






彼氏なんだろう?

「きまってんじゃん、冗談だって、冗談。」





話があまりに唐突すぎて、僕は上手く会話を続けられなかった。

また連絡して、と彼女に伝え、僕は電話を切り、トラックの脇に座った。


汗が冷えて、寒かった。





妊娠してるかもしれない、と彼女の言葉を何度も反芻した。

その言葉が頭の中をめぐるだけで、あとは何も考えられない。

自分の好きな女が他の男の赤ん坊を身ごもったかもしれないというのに、僕は呆然とするだけで、明確な感情は出てこなかった。

一日たった今も、事実(といってもまだ不確定だが)の重みだけを感じていて、今の自分の気持ちを表現する的確な感情を選ぶことが出来ない。





今日の学校帰り、僕は何事もなかったように本屋へ寄り、今後の彼女の指導に使えそうな数学の問題集を選んで家に帰ってきた。


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