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count down to the end■2002年10月30日(水)

昨晩は数学の指導だった。

厄介な設問があり、それの解説のために指導時間の大半を費やした。

お互い、一所懸命、一所懸命だ。





「堕ろしたことを言うと、みんなやたら心配するんだよね。もういい、ほっといてよって感じ。」

心配するなと言う方が無理だろ。

僕はどういう表情をしたら良いか分からなかった。

ただ、顔をこわばらせていたと思う。

「それに、“あんたは冷たい人だ”って言うんだよ。私はさ、そりゃ子どもには悪いと思うよ。でも、大学には行きたいし、その先やりたいと思うことはあるし。大体、今産んでもお金とかないしちゃんと育てられないわけよ。産んだら産みっぱなし、育児もしないなんてそっちの方が無責任で冷たいと思うじゃん?」

そ、か。

「うん、だからね、私は頑張ります。」

生徒はにっと笑った。

そっか、そっか。

僕は彼女の目を見て、辛かったな、でも、君のことは応援するよ、と言った。






生徒は、
「そういえば、先生、私が妊娠してたっていった時、“おめでとう”とか言ったでしょ。」

ああ。

「あの時、ほんっとムカついた。好きじゃなかったのか!なんなのこの男ー、悔しいとかないのか!って。」

うーん、まあ、一人の家庭教師としてはおめでたかったんだよ。最も、男としてはへこむ感情はあったよ、でも、落ち込んでるのを知られたくなかったからさ、ここは大人として対応しなきゃなって。

「ふーん、まあ、私も先生の顔見ると勉強、勉強とかそんなことしか思い浮かばないんだけどねー。」

あっそ。





「もう後少しだね。」

2月いっぱいか、そんなところだな。

「受験終わったら、会う理由がなくなっちゃうよ。どうする?先生。」

生徒は僕の顔を見ていた。

そうだな、必要とされるなら、君にとっての何者かでありたいと思うよ。

「ふーん。」






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