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ゲームオーバー 1■2002年11月19日(火)
昨晩は数学の指導。
生徒の様子が変だったので、勉強が終わったあとで何かあったか?と彼女に訊いた。
月曜日に彼氏はメールで、彼の性器が腫れ上がりうみが出たので病院へ行ったと伝え、それ以来、まる一日以上連絡が途絶えていたそうだ。
「私が病気をうつされてきたかも知れない。浮気がばれたかも知れない。彼氏が怒ってたら、どうしよう?」
生徒は、夏の頃に一度浮気したことがあったと彼女は告白し、泣き出しそうな顔をしていた。
僕は、大丈夫だよ、と言った。
裏切られていたことに怒るよりも、まずは彼女を落ち着かせることの方が先決だった。
今夜はまだ仕事が忙しいんだよ、きっと。だいたい、今夜は僕と勉強してると思って、彼氏は遠慮しているんだろう。
「だって、夕方から何回電話してもメールしても返事がない…。」
時刻は23時を過ぎていた。
それに、病気だったら堕ろした時に判ってるはずだから。そんなに前のことが最近になって突然発症するとは思えない、そう僕が否定しても生徒は悪い予想ばかり膨らませていた。
仕方ない、僕は生徒に、彼氏の職場まで行こう、と言った。
彼女の家には門限がないのか、生徒は夜も自由に外出している。
彼氏の仕事のあがりが夜遅いというのを家族が知っているはず、だから彼女がこれから出て行っても彼氏が迎えに来たのだとみなされるだろう、と僕は考えた。
そこで、僕は一旦彼女の家を出て、10分後に支度を済ませた出てきた生徒を車に乗せて出発した。
彼女を落ち着かせるには、他に方法がないと思った。
車に乗ってからの生徒は、さっきまでとうって変わり、興奮して多弁だった。
そして携帯に同級生の○○君からメールが入ってくると、
「もう、この際振っちゃおっと。この子、推薦入試も終わったことだし、少しくらい落ち込ませてもいいよね。すっきりさせよう。」
とメールを打ち始めた。
「…私は勉強に集中しなきゃいけないし、○○君は遠くの大学へ行っちゃうし、別れよう。こんな文でどう?いいよね、送りまーす。」
生徒のメールに対し、その○○君からは一度、どうして?ととまどいのと返信が来たが、
「これを読んだらもう何も言ってこないでしょ。」
と生徒が言うメールを送ったあとは、彼女の言葉通りなんの返答も来なくなった。
やっつけ仕事、一丁あがり。
「こんなあっさり終わるもんなんだねー。悪いとかぜんぜん思わないし。」
生徒は僕の方を見てピースしながらそう言った。
人と人との関係なんて、そんなもんだよな。
つながりなんて、あってないような、弱いものだ。
僕は、数ヶ月後には自分と生徒との関係もあっけなく途切れるのだ、と想像しながら運転していた。
(11月20日へ続く)
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