『ノーストリリア〜人類補完機構〜』 / コードウェイナー・スミス
相変わらずSFを読んでます。 この「ノーストリリア」はどうやら面白いらしいというつぶやきを読んで借りてきたものの、早一か月。 数ページ読んでは眠くなるというのを繰り返し、何とか先日読み終えました。 正直、本編よりあとがきのあらすじを先に読むべきでした。
ノーストリリアとは、「オールド・ノース・オーストラリア」の略で、病気になった巨大羊から取れる『ストルーン』という不老長寿の薬を売って大儲けしている惑星の名前。
大儲けしているとはいえ、そのお金におぼれないように自ら2000%の関税をかけて、実に質素な暮らしをしている。 そして自らが見つけたストルーン(長寿薬)のおかげで増大する人口を抑えるため、ある一定の年齢になると、試験を課して、試験に落ちた子供を間引きする習慣があるらしい。
主人公はノーストリリア一の大地主の青年で、何度か試験に落ちたものの、そのたび幼児退行→成長を繰り返して4度目の試験に受かった(つまり落ちても再試験があるらしい)。 ようやく土地も引き継げるしこれで400年生きられるし、もう安心と思ったら、たまたま長寿薬が効かない隣人に、ひがまれて命を狙われる羽目に。 コンピュータに聞いてみたら結構な確率で殺されるだろうと予測され、回避するには「地球を買い取る」しかないという話。 意味が分からないまま、長寿薬を先物取引に出して、銀河を相手にコンピュータの言うまま売ったり買ったりしたところ、地球をまるごと買い取れ、大、大、大金持ちになった為、今度は宇宙全体から命を狙われる羽目になり、回避するため人類保管機構のある人物の手を借り猫人間に改造されて地球に赴く。
という話。 なのですが。
主人公は流され流され、言われるままに動く16歳の青年で。私は感情移入ができませんでした。 というより、作者は別に感情移入させようとして書いてはいないんじゃないかな。主人公のあれこれよりも、この世界観を書きたかったんだと思う。 さらには主人公よりも、主人公が地球に送られた後に出会う、ク・メルという猫美女のほうが、どうやら重要な人物らしいです。
らしい。 というのはこの作品、コードウェイナーの書く「銀河史」のごく一部分だったらしくて、ノーストリリア以前の短編を読んでこそ面白いみたい。 ク・メルはその中にたびたび登場するヒロインだったらしい。 そして根底には魚の考え=失われた宗教感。があったらしく、コードウェイナー自身は、その点を完結させる前に亡くなったようで。
全部、みたい、とか、らしい、でつなぐ文はよくないと分かっているんですが。
一冊読んでみて、この世界はずいぶん細部まで構築されていて広そうだというのは感じるのですが、作者の頭の中で出来上がっているので、この一冊だけでは不親切なように思います。 何度かゆっくり読み返さないと身に染みてこない作品だと感じました。
けど、なんかちょっと魅力ありますよ。 特にラストはね。 そして、私にとっては痛快活劇ではなかったですが。たぶん好きです。
先に短編のあらすじをざっとまとめたあとがきか、短編集そのものから読み始めることをお勧めします。
では、また!
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