この時期になると決まって思い出す 大学の4回生の終わりだったか あるデビューバンドの 作詞のオーディションがあった
デビューアルバムの何曲かに 新人のライターを公募する企画 根拠のない自信と虚勢を身にまとい ここぞとばかりに応募した
応募総数6000人 そのうちの50人に残った僕は 東京での最終審査に出向いた 初めての上京だった
会場の上座には ブラウン管で見た顔がいる 織田哲郎氏や亜蘭知子氏 一流のソングライター達の横に 同い年ほどの見た事もない4人がいた 彼らのデビューアルバムだと思った
必要書類に記入をしていると その姿を覗き込む人がいる 「滋賀県出身か。僕もや、頑張れよ。」 見上げると背広を着た大人が立っていた その審査まで全く知らなかった人物 その人は長戸大幸氏だった
僕は身勝手に未来を見てしまった 「これは何かの運命ちゃうか…」
上野のカプセルホテルに泊まった FRPで出来ているバスタブのような 寝転がるしか考慮されていない穴は 到底スヤスヤ眠れる場所ではないが
それにもまして日中に湧いた アドレナリンが僕を眠らせなかった 想像の太陽を握り締めていた それはまるで架空の太陽でしかなかった
2週間後ポストに紙切れ一枚が舞い込んだ 不採用48人のうちの一人だった かすれた複写の「お詫び」が届いた
少しの月日を経て「彼ら」はデビューし 「Stop the season in the sun!」のサビと共に 一気にスターダムにのし上がった
見事な光と影だった
そして 影は今も光を求めている あの時の架空の太陽を現実にしたいが為に
彼ら:TUBE 長戸大幸氏:音楽事務所ビーイング社長
|