今日はいつもの店の飛び入りライブ チャージのない誰が出てもいい日だ
少し遅れ気味に店に入ると 見慣れない顔がカウンターに座っている 僕の顔を見つけた瞬間 「おぅ!元気け?」 「うわぁ!どうしてたんですか!」 久しぶりの再会は 素直に僕を嬉しくした
彼は著名ではないが プロのミュージシャンだった この店で歌い始めた頃に出会い 僕の音楽への接し方を 叱咤激励して下さった人だ
彼はいわゆる「場末のプロ」だ 立場は職業音楽人に近い人だが そういう割り切りが出来ずに 表現者としての狭間で揺れていた
今までの自分の経験と結果に 僕の音楽を照らし合わせて その当時はよく叱られた
「オマエはがけっぷちを知らん、 そやから今ひとつ音がしっかりしとらんのや!」
「オマエ、ホンマに音でメシが食いたいんか? それやったらもっとやり方考えろ!」
「オマエ、もっともっと貪欲にならなアカンわ、 音で人を震わすつもりやろ?甘やかし過ぎじゃ!ボケ」
過去の自分を見事に棚に上げ、 ベロベロに酔って彼は言った 口にすること逐一が 僕にとってもっともだと思われ やりこめられる度に凹んで家に帰った
しかし一度彼は僕にこう言った 「オマエの音のスタイルは誰にも真似は出来ん、信じて貫けよ。」
約3年ぶりに彼の前で僕は歌った 技術云々ではない何かを伝えようと思った
「変わってへんな♪相変わらずヘタやけど」
久しぶりに本当の優しさを感じた夜だった
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