気ままな日記
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2004年12月16日(木) 祖母の歌集

父方の祖母の遺した歌集を久々に読んでみる。
生前、彼女が折にふれ、5.7.5.7.7.の形に詠んでしたためたものである。
タイトルは『うさぎ』。わたしと彼女は同じうさぎ年。わたしが24歳の年女の時に、この冊子を渡されたのだった。
縦書きの罫線に沿って、万年筆で書かれた歌のひとつひとつには、孫や息子娘たちとのなにげないやりとり、ベランダに咲く小さな花や訪れてくるノラ猫、朝に偶然見た茶柱などが登場する。それらの内に、死者との思い出をつむぎ、老いの孤独を感じ、また明日へのささやかな希望をつなぐ。
彼女はいつも、人の好意に対して素直に、ありがとうという感謝の気持ちを持っていたように思う。

 空虚の穴を埋めようと、あれこれ買いあさったり、片っ端から新しいことに手をそめたり、人さまのためだと走り回り(実は自分のため)、その昂揚感に一時満たされたような気がしたりすることの愚かしさについて、彼女の歌は教えてくれているようでもある。
何も特別なものはいらない、今あるもので充分なんだよ、そのままでいいんだよ、と。
からっぽでもないが、でも完全に満ちることもないのだ。
空虚の穴はふさぐべきものではなく、抱えて生きるものなのかもしれない。

―などと、知った風に言ってみるものの、ポッカリとあいた時間をもてあまし、その中にあれこれ何か入れたくなってしまうのはいつものことなのだけど。


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