蜜白玉のひとりごと
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2002年05月25日(土) |
思い出の町「霧の谷」 |
『霧のむこうのふしぎな町』というファンタジーを最初に読んだのは、小学校3年生ぐらいだった。お話にずんずん引き込まれて、周りの音も聞こえず、暑いのか寒いのかもわからなくなるくらい、夢中になって読んだ。この時はじめて、本を読むことのおもしろさがわかった気がした。『霧のむこうのふしぎな町』は、目からうろこの一冊、私の読書の原点なのだ。
以前、本屋さんでアルバイトをしていたとき、おばあちゃんと一緒に本を買いに来る小学生の女の子がいた。女の子はなかなか読書欲があるらしく、たびたびお店に来ては、おばあちゃんに本を買ってもらっていた。女の子と私は本の好みが似ていて、まるで小学生の自分を見ているようで、ほほえましかった。
ある日、女の子が講談社青い鳥文庫を1冊持って、レジへやって来た。見れば、『霧のむこうのふしぎな町』ではないか!「わあ!ついにたどり着いたのね。これおもしろいよ、絶対!」と、心の中で歓喜の声をあげながら、それでも黙って包んで渡した。私が何か言ってしまってはもったいない。まっさらな気持ちで楽しんでほしい。女の子がこれから出かけるファンタジーの世界を思うと、すごくどきどきしたし、うれしかった。
『霧のむこうのふしぎな町』に出会ってから15年、縁あって、作者の柏葉幸子さんとお会いすることができた。白百合女子大学の「21世紀児童文学シンポジウム」のゲストとして盛岡からいらっしゃったのだ。シンポジウムでは興味深いお話をうかがい、懇親会では楽しくお食事ができた。本当に夢のようなできごとだった。
今でもときどき『霧のむこうのふしぎな町』を読み返す。霧の谷がそこにあることを確かめて、安心して帰ってくる。読み返すたびに、そこには、本当にたくさんの思い出がつまっていることを実感する。
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