ちょっとだけ言葉を書きたいうずうずが来た。 だから忘れないように書き留めておく。
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都会の空はたばこの色で、雨の匂いもしないんだ。 だから僕は駅でひとり、タイルを眺めては遠く離れた君を考える。 その度に明日帰るこの旅路が途方もないものに思えて もしかしたら帰らない方がお互いに幸せなんではと思わせる。 都会の寂しさはそういう魔力で僕に忍び寄っては 君とメールがとぎれたことを後悔させる。 もしも新幹線じゃなくて、鈍行のバスで8時間揺られるなら 僕は帰らない方を選ぶかも知れない。 乗り物酔いに遭うくらいなら君を忘れることを選ぶかも知れない。 お互いに身勝手な好き方をしましたけど、年賀状は忘れませんでした。 他人行儀で会いたいのです。 抱きしめたり、耳に名前を吹き込んだりそんな真似はいらないので。 お互い初対面の他人として、もう一度会えたらいいなあ、と思う。 できるならこのくすんだ都会で、車ばかり走っている真夜中の都会で。
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