一時期。
うん、そう一時期。 青春とかいう無自覚な時間はとっくに終わったけど。 振り返ってみてそういう時期の中で、一瞬。 僕は何か、 そう、何でもいいからものを書いて生きてみたいと思ったことがある。
思ったっていうのは違うかな。 すごく妄想的な計画だけど、僕はそれを切実に願った。
それは自分にとって適している。 信じて疑わなかった。 一瞬ね。 その瞬間っていうのは、詰まるところドラッグで飛んでるのに近い。 無敵に脆弱な、そういう存在だった。
でもある時、気づいたんだな。 文章は僕を好いてはいない。
いるんだなあ、と。 言葉に愛されてる人っているんだなあ、と。 そして省みて。 自分は独り善がりに、言葉を求めてた。
オナニーに近いんだよ。 その行為は。 それで僕はもう青春らしい時期が終わったことを知って自慰をやめた。 やめることはとても苦しかった。 でも気づいてしまったからにはやめねばならん。
美学。 うん、馬鹿だ。 この時代に美学なんてナルシシズムを振りかざすのは馬鹿だ。 それも一種自慰的だ。 しかし自分が自慰してるのを、平気な顔で直視できるほど僕はまだすれてない。 青いね。
脱線した。 それで、言葉に愛されてる存在に気づいたとき、同時に僕は自分自身の限界と、僕の見ている空の高さが、決して高くはないことを知った。 愛されてる存在から見えている空は、僕の空よりもずっと青く澄んでいる。 もしかしたら、時間や空間を越えた、宇宙的なものまで見えているのかも。
僕らは決して同じ世界に生きているわけではないのだ。
勝てないっていうより、世界、次元。 それが違う。 で、僕はそこに挑戦することを放棄した。 うん。 そこに一生を捧げる、それでご飯を食べることを諦めた。
すごく短い夢だった。 今じゃ僕にとって文章はただの趣味だ。 ライフルももう趣味だ。 勉強だって趣味だ。
世界に僕なんかが反逆するなんてこと。 牙を剥いて玉座を奪い、トロフィーを抱くなんて、無理だと悟った。
それが僕が詩を書くことに昨年のこの時期から絶望した理由だったりする。 一年間かけて、拙いながらも、半端かも知れないが、総括するとこうなった。
理解されないかも知れないし そんな妄想抱いてたんだ、ふーんって感じられるかもしらん。 無理に決まってるじゃんとか 分かってなかったのか、とか うん 分かってませんでした。 妄想なんだなあ。
世界は妄想でできている。 で、妄想を見続けた人が、まあ、妄想を現実にする。 目が覚めてしまった悲しさは、後からどっと来る。 もう僕は夢を見たりはできない.....
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だからと言って何もしないっていうのはまた、違う。
そこに立ってファイトすることが必要なのかも知れない。
けれど、少なくとも、今の僕は少しのぼせた餓鬼だ。
間違いない。
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