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必要があって、何十年ぶりかで、万葉集の注釈書など見ていたら、学生時代に帰った気分で、しばらく読みふけってしまった。 礒の上に生ふるあしびを手折らめど見すべき君がありと言はなくに これは、謀反の疑いを掛けられて死罪になった大津皇子を偲んで、その姉の大伯皇女が歌ったもの。好きな歌だ。今我が家の馬酔木がいい具合に咲いていて、ホームページに載せているので、この歌を思い出した。 万葉の歌には、いろいろなドラマが隠されていて、大変おもしろい。人間の心は、時を隔てて変わらないものだということを感じる。 壬申の乱の登場人物である、天智天武を中心とした、額田王を巡るドラマなど、想像するとわくわくする。 きみが往く道の長手を繰りたたね焼き滅ぼさむ天の火もがも これは狭野茅上娘子の歌。激しい恋歌だ。若い頃誰かに贈った覚えがある。 歌というのは、リズムがあり、形が整っているので、言いたいことをほどよく伝える力がある。昔の人は、コミュニケーションの手段として歌を詠み、それに返歌をして、お互いの気持ちを伝えあったのだった。 外国生活をしていた時、家によくご飯を食べにきていた若い人と、短歌をやりとりしたことがある。周りが外国語ばかりのところで暮らしていると、日本語に飢えてくるのである。日本にいれば、まずこんなことはしないであろう。 私は短歌の結社に入っているが、なかなか歌が出来ず、何時も締め切りの日になって、あわててひねり出す始末である。 時間がないとか、忙しいとかいうのは言い訳で、歌を生み出す精神がないのである。 久しぶりに万葉の歌にふれて、1200年もの時間を超えて、万葉人と同じ世界を、ほんの少し共有したような気がした。
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