此処は何処 相変わらず空は曇りだけど 時間はあれから流れているのかしら
そういえば水溜りには青空が映っている
この世界が時を止めたのね | |
紡いできた言葉を解くように 原点へ還ってゆく
雨粒が波紋を呼び
虹が揺れた | |
胸が痛いのです
世界が狭すぎて。
息苦しくて。
誰にも理解ってもらえなくて。
もうこれ以上お話することはありません。
秘密を抱いて
世界の果てまで行ってきます
多分そこで
こんなものを
捨てるのだと
思います
他人と自分を比較することに疲れました 詮索することに疲れました 止められない自分を止めてください 気になる人など欲しくありません 人のことなど知りたくありません 助けてください 遠い白い彼方へ行きたいです。 自分を誰より愛したい。 小さな棘を気にする自分を解放したいのです。 くだらないでしょう。 どこか遠くへいきたいのです もっと純粋に世界を感じていたいのです。 透きとおって。白くて。涙が冷たくて。 | |
独りで居るとき平和な現実の裏地をかえしてみる。 秘密にしている昔。 今と違う感情が滲み出して止まらなくなる そしてそっと浸るの。 届かなかった恋のこと。 一枚。一枚。ほころばぬようにこうして時々確認する。
現実の裏に縫い合わせた これが私の夢。
私の持ち物をどんなに探しても 宇宙のように暗くて。儚い。ものはたったこれだけです。 | |
音楽家がいました。 月夜の晩に屋根の上でバイオリンを弾いておりました。
音色は夜を流れて 眠れない絵描きの窓を叩きました その窓を開けた絵描きは割れた筆を取り、 音に導かれるまま、粗末な紙に悲しく美しい絵を描きました
やがて月日は流れ 絵描きは死にました 独り身だった彼女の家は廃墟となり家の壁は蔦で生い茂りました。 部屋の中には美しい蜘蛛の糸がいくつも掛かり、 誰も近づくものはいませんでした
ある日 旅をしていた詩人が廃墟の前で立ち止まると 吸い込まれるかのように中へと入ってゆくのでした。 小さな部屋には古い机が一つきり。 重い引き出しを開けるとそこには絵描きの遺したたった一枚の絵が入っておりました。 それはそれは、悲しく美しい、あの月の晩の絵だったのでした。
詩人は震える手に持ったその絵を食い入るように見つめると この世の美しさと悲しみのすべてが 胸の内に注ぎ込まれてゆくのを感じました。 詩人は晩になるまで詩を書いたのでした。
さらに幾年が過ぎ、詩人の元へある若い音楽家がやってきました。 その詩をどうか譲ってください。私は愛する絵描きのためにセレナーデを弾いてやりたい。それにはあなたのその詩が必要なのです。と言うのでした。 年老いた詩人は、人生最高の傑作であったあの詩を若い音楽家に託しました。
音楽家は美しさと悲しみのすべてを音楽に変えました。 永遠に結ばれることのできない愛する絵描きに届くよう、街でいちばん高い屋根に登りました。 夜の風と月光に音を乗せ、 眠れない絵描きのために音楽家はバイオリンを弾き続けるのでした。
永遠にこない朝を知りながら
その弦が切れるまで
いつまでも。
いつまでも。
彼はバイオリンを弾き続けています | |
生きるためにそうしたんだ
心に銃弾を受けても 生きていこうと決めたんだ | |
|