2007年02月13日(火)
2月13日。 ルーンミッドガッツ王国の首都・プロンテラはかつてないほどの賑わいを見せていた。 賑わいの原因は本日おふれ(パッチ)が降りた、「バレンタインイベント」の開始である。 ルーンミッドガッツではこの「バレンタインイベント」は女性が好きな男性に愛の告白をしても恥ずかしくない期間として定められているものだから、女性にとっては一年中で1,2を争うほど楽しみなイベントでもある。
「・・・で、クリスさんはいつになったらチョコ作成クエストに行かれるのですか?」
スッコーン。
とんがり帽子をかぶった銀髪の美人「男」教授が勢い良くコケる。
「いやっ!?僕、男だしっ!!」
そういって真っ赤になりながら慌てふためく様を見て問いかけたフローラはくすくすと笑みをこぼす。 一通り笑い終えたフローラが諭すように語ってきた。
「性別なんて関係ありませんわ。それに、シュバルツバルド共和国では男性から送るケースも普通にあったんですのよ?」 「いや、でも!別に恋人なんかいn・・・」 「・・・あらぁ?」
再び顔を真っ赤にして、慌てて否定しようとするクリスにフローラは意味深に片方の口の端だけ上げたアルカイックスマイルを見せた。
「そんなこと仰いますと、どこかのチャンピオンさんは悲しみますわねぇ。」
恥ずかしさ爆発なのか、クリスはとんがり帽子を深くかぶって顔を隠した。
「クリスさん、大切なのは日ごろの感謝の気持ちを伝えることですわ。毎日もらっている『幸せ』のお返しがチョコで喜ばれるんですのよ。」
そう言われてドキっとする。 いつも貰ってる、『幸せ』。 自分は恥ずかしくていつもそれに満足に答えてあげてはいないから・・・。
「・・・そだね。それくらいはしないと、だよね・・・。」
そろり、と目深にかぶったとんがり帽子から上目遣いに立っていたフローラを見やる。 そのなんとも愛らしい仕草にフローラは「可愛いですわ!」と叫びながらクリスに抱きついて、こそっと囁く。」
「それにね、・・・チョコぐらいで男って半年は飼いならせるものですのよ。」
その恐ろしい言葉にピキーンと固まってある人の顔が脳裏によぎる。 フローラの夫・斬玖。 アマツ出身で女性慣れしてない彼はおととしフローラから貰った「義理チョコ」を後生大事に持っているのをギルドの誰もが知っている。
「さ、じゃあクエストしにいきましょうか!手順はわたくしがお教えしますわv」
そういってルンルン気分で速度をかけてワープポータルの呪文を唱えるフローラを見てこの人には逆らっちゃいけないなと痛感したクリスだった。
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