2007年02月14日(水)
「えーっと、バターを常温で溶かし・・・小麦粉をふるいにかけ・・・」
ここはジュノーのとある建物の中。 チョコレートクエストを済ませてきたクリスがさっそくそのレシピを元にチョコタルトを作っていた。
「さすが教授、ですわね。手つきはおぼつかないながらもデータどおりに調理してますわ・・・。」
クリスは生まれて初めての料理だと言っていたので付き添って指導していたフローラ。だが、教授たる素質からかクリスは基本さえ教えれば感心するほどデータどおり正確な調理をするようになった。
「・・・わたくしより、上手ですわ・・・。」
がっくりと肩を落とし、頭を垂れるフローラ。 その言葉にクリスは驚いたが、調理は中断せず視線は調理中のソレへと向けたままえっと声だけ上げた。
「・・・おはずかしながらわたくし、15個作ったうち、5個失敗でしたの・・・」
ウフフ・・・と笑みをこぼすが、いつものやさしいものではなく完全にブルー入ったものだ。
「ま、全滅よりマシだよっ!」
気休めではあるが、フォローを入れる。 そうこうしているうちにチョコタルトは出来上がったようだ。
「うん、完成!」 「すばらしい出来ですわ!とても料理が初めてとは思えないくらいv・・・でも、チョコタルト1つだけでいいんですの?」 「まぁね。どうせアイツにしかあげ、ないし・・・。それに時間もあんまりないしね・・・あはは!」
今回はおふれが遅かった分、バレンタインイベント本番は今日、2/14. つまり、チョコクエをしていたら結構ギリギリの時間になってしまったわけだ。
「そうですわね・・・。あまりグズグズもしてられませんし。ポタで溜まり場まで飛ばしますわね。」 「ありがとう。・・・あれ、でもフローラさんは?斬玖さんも宿から出てきたみたいだけど。」 「わたくしは・・・これで呼び出しますから。」
フフッと笑ってダイヤの輝きがまぶしい結婚指輪をはめる。 ああ、結婚スキルか。便利そうでいいなぁ・・・。
「それでは、頑張ってらっしゃいませ。・・・ワープポータル!!」
出来立てのチョコタルトを手に、僕はポタへ飛び込んだ。
砂漠の都市・モロク。 常夏のこの都市に移動した瞬間、手に持っているチョコタルトの安否が心配になる。この暑さではチョコが解けてしまいそうで。
「オッズは・・・いたいた。」
溜まり場から少し北西にいったところにカプラビニットさんがオッズに頼まれて倉庫をあけているのが見えた。
「オッズ!こんにちわ。」 「あや、クリス。やっほー!」
倉庫をあけたまま僕に挨拶をしてくるオッズ。 倉庫をあけている間は、アイテムを盗まれるのを防ぐために倉庫の持ち主はそこから動けない規約になっているため、いつものような熱烈な抱擁はしてこなかった。
(倉庫あけてるなら・・・今渡しちゃったほうがいいよね・・・。ムダに誰かに見られるよりは・・・)
少し考えてオッズにもう少し近づき、取引要請を出す。 無言で要請したから、オッズは「?」マークを頭に飛ばしていた。
「こ、これ!いつものお礼!!受け取ったら何にも言わずに倉庫に放り込んでおいてね!」
そういいながら、僕は恥ずかしさ大爆発だったので自慢のとんがり帽子で顔をほとんど隠してさっき作ったチョコタルトをオッズに突き出す。 オッズは一瞬ナニを渡されたのかわからなくてなされるがままに受け取った。
「・・・ん?・・・もしかして、これ・・・」 「あー!あ゛ー!!確認なんかしなくていいから!今は倉庫に放り込んで、あとでコッソリ誰にも見つからないように食べてよ!!」 「やっぱり・・・チョk・・・」
「あ゛あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!! 言わなくていいってばあああああああああああああああああああ!!!」 「やっぱり!やったね!!」
モロク中にこだまするんじゃないかって言うほどの僕の大絶叫と嬉しさのあまり早々に倉庫を閉めて練気孔→爆裂波動拳を繰り返すオッズの奇行はまたもや僕達のギルド『ドゥロー・オブ・ハート』の知名度を変な方向に高くするのに十分な、2/14の出来事だった。
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