独り言
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2006年04月30日(日) |
テリーデイズというBandについて・その9 |
スージー・キューはジョージと初めて出会った時の事をこう記憶している
「…とにかく小汚かった
ウチの若い人間が何処ぞで拾ってきたきたんだけど『拾ってくんならもっとマシなモン拾って来いよ』って怒鳴った記憶があるわ
…まぁ結果的にはこれ以上無い拾い物だったんだけどね」
ジョージはその後運良く別のキャラバン隊と出会い「何処か大きく人が沢山居る街まで連れてってくれ」と懇願したのだという
「大きい街に行けば僕にも居場所があるだろうと思ったんです」
そして彼が辿り着いたのが北京だった
しかしそこは右も左もわからない大都会 言葉も通じぬこの街でジョージの衝動は次第に衰え為す術も無くただ街を徘徊するのみだった
「正直『あっ…死ぬ』って思いましたよ」 とジョージは笑って言う
それから何も口に出来ぬ日がずっと続き体力的にも限界を迎えたジョージは力無く公園のベンチに横たわりうわの空の太陽をただ眺めていた
そこにたまたま居合わせたのが蛇孔の人間だったという訳である
「明らかに『普通じゃなかった』んだよ
だって平和公園のベンチでどう見たって中国人じゃない男の子がボロボロの身なりで今にも死にそうに横たわってんだぜ
…あれを素通り出来る人間なんていやしない でもみんな不気味がって遠巻きに見てるだけでよ
それで俺が近付いて声かけようとしたら誰かが呼んだ『道案内屋』が丁度来やがって…
…あっ「道案内屋』ってのは警官の事よ 『テメェ等は道案内だけしてりゃいいんだよ』って意味を込めて俺が考えた隠語なんだけど…いいセンスしてっだろ?
まぁそれはどうでもいいんだけどよ んで俺何も悪さなんかしてねぇのに『逃げなきゃ!!』ってなって取り合えずそのボーズ抱えて走ってたんだ
…何であんなボーズ抱えちまったんだろう? とにかくほっとけなかったんだよ
…でも姐さんにあんな怒られるとは思わなかったよなぁ
マジついてないぜ」 とジョージを拾った男は語ってくれた
「私だって鬼じゃ無いからね こう見えても『人間力はかなり高いよね』ってよく言われるし
取り合えず私の側においとこうって事にしたの それが一番安全だから」
その少年の事を詮索しようにも言葉の壁があり余りに骨の折れる作業だった為基本的には面倒な事が嫌いなスージー・キューは「あなたの名前は何?」と聞かず「あなたの名前は今日からジョージね」と言ったのだという
「ジョージっぽいから」という理由だけで
「サーカスに居た時にはもちろん別の名前がありましたけどそんな事はどうでもいいんですよ
たかが名前ですから
スージーさんが僕をジョージと呼べば僕はジョージですしアルが僕を『ホリ・フカオ』と呼ぶならそれでいいんですよ
実際ホリ深いですし」 と言いしばらく間を置いてから
「誰かが僕を悪魔と呼べば僕は悪魔に違いないんです
名前って…そういうものでしょ?」
と続けその日一番の笑顔を見せたという
しかしその笑顔は嫌味な程に大き過ぎて 「作り物みたいで…逆に心が感じられなかった」 とその時のラジオのインタビュアーは話してくれた
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