ダメダメちゃむ日記
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2002年11月27日(水) 怒る権利!

【予告】
昨日の日記「美酒」から、「ちゃむ」は、「ダメダメちゃむ日記」は、いきなりの変貌を遂げます。今はお客様の笑いを取る心の余裕が私にはありません。私の魂の叫びがしばらく続きます。ダーリンと主治医と、ここでしか叫べない弱虫の泣き言、愚痴が続きます。どうぞ、ご理解ください。今、私は自分を取り戻すかどうかの瀬戸際にいます。それがご不快な方、笑いを期待されている方には「ちゃむの日記を読まない権利」があります。しかし、私は、今、共に苦しむ人々の為に、自分の為に、自分本意の叫びを続けます。ご容赦下さい。
※めちゃめちゃ長文です。そして、重い内容です。かなり鬱陶しい日記です。それでも構わない方だけ、お目通し下さい。


 親による精神的・肉体的・性的虐待を受けた子どもには怒る権利がある。満面の、無条件の愛情を注がれなかった私達は、怒りを持つことができる。そして、怒りは(傷つけられた精神の、削り取られた人生の)回復への原動力だ!
 性被害を被った女性も男性も怒っていい! 怒らねばならない! そうしなければ報われない。私達「サバイバー」(生き残った者)は苦痛の中にあって今も尚、死を選ばずに(死ねずに)生き抜いた、それを誇りにし、胸を張って生きていく権利がある!!

そう教えてくれたのは、1冊の漫画と1冊の本。そして、セクシュアル・ハラスメント防止を訴える講演会。そして、仲間。

「今日も青い空」金子節子著 双葉社 定価714円+税
(ISBN4-575-33276-3)
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000007101879

そして、その漫画により導かれた本、
「甦える魂
〜性暴力の後遺症を生きぬいて〜
―なぜ生きるのがつらいのか、人にとって子供時代とは―」
穂積純著 高文研出版
(ISBN4-87498-147-X )
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000019334417

 母よ、あなたの生い立ちは確かに不運だった。
 幼くして「素晴らしい」実母を病気で失い、生活的自立ができていない実父のせいで、すぐに現れた義母の愛情を得る為に、必死で「素晴らしく親の言うことを黙って素直に従ういい子」で、「とんでもなく成績のよい子」であろうと、妹弟達への愛情を分けてもらう為に努力した長女のあなたの不幸が、今日初めて理解できたよ。可哀想なあなた。そして、それを今でも理解できないでいる深い心の闇を持ったあなた。かわいそうに。

 しかし、あなたはその不運故にとんでもない間違いを犯したことに、一生気付くことはできないのよね。私の主治医も言ったよ。
「僕もあなたのお母さんは大嫌いです。ガンバリストのあの人は一生治りません。あなたが自分の力でお母さんの呪縛から逃れて、あなた自身の人生を取り戻さなければ、あなたは生きていけませんよ」と。
 精神科医にまで不治の病の烙印を密かに押されたあなた。かわいそうに。
 でも、私はあなたによって、いいえ、私の兄もあなたによって、精神的抑圧という虐待を受けました。だから、私には怒る権利があるのです。いくら「愛」という真綿にくるまれたまやかしの「母」と「子」であろうと、苦痛を受けた被害者は「痛い!」と叫ぶ権利はあるのですから。

 両親の無条件の愛に恵まれず、配偶者とも理解と互いの尊重という愛情を結べなかったあなたは、子どもである兄と私に、自分の不遇を更に押しつけましたね。
 幼少時から、何百回、何千回、いかにあなたが「素晴らしく親の言うことを黙って素直に従ういい子」で、「とんでもなく成績のよい子」であったかを、毎日のように繰り返し聞かされたことでしょう。それしか、あなたには生きるよすががなかったのでしょう。でも、私も兄もその毎日のあなたの自己の尊厳の主張の為に、愛情に条件がつけられることを押し付けられたのです。
「親のいうことを素直に従わなければ愛されない」
「とんでもなく成績のよい子でなければ愛されない」
 あなたの言葉に隠されたメッセージを、兄と私は命懸けで受けとめなければならなかった。あなたに愛される為に!!
 兄は前者を選んだ。そして私は後者を選んだ。そうすることでしか、あなたに愛されないことを押し付けられてしまったから!
 私と兄はあなたに「正しさ」を教え込まれた。正しさの基準は全て、あなたの価値基準。「お母さんは苦労した。お母さんは偉かった。お母さんは正しい。だから、私達はお母さんの言う通りにしなければならない。それが社会の正義だ」とまで。

 成績優秀で生徒会活動にも部活動にも熱心であった私が、何故15歳にして煙草を口にせざるを得なかったか、あなたは一生わかってくれないよね。煙草を吸うのは数回バレた。でも、あなたは形通り、私を不良呼ばわりして、叱るだけだったね。私の苦しさに気付こうともしてくれなかったよね。「いい子」であることが、15歳の私にとってどんなに苦しいことか(15歳の私には自覚はなかったが)を理解しようともせず、成績と煙草で私を評価したよね。

 父が過労から心を病み、祖父母とあなたの不仲の中で、長男としてその優しさ故に何故アルコールに逃避せざるを得なかったか、あなたは全く理解しようともしなかったよね。
 中学1年の時の離婚云々の夫婦喧嘩を聞いて、私がどれほどの哀しみで兄に泣きついたか、中3の兄がどれほど精一杯私を抱きしめてくれたか、あなたは知らないよね。だって、話してないもん。話せなかったもん。何故って、「お母さんは正しい」から。でも、中学生の私達はもう気がついていたよ。「お父さんを病気にさせたのはお母さんだ」って。でも、言えなかったんだよ。何故って、「お母さんは苦労している」から。

 あなたの生活の苦しさを、哀しさを、苦労を聞かされた私は、高校3年になった頃には、見事にそんな父を憎むようになったよ。心から憎むようになったよ。家族への経済的義務を放棄し、その病ゆえに酒におぼれ、借金を重ねた父を憎んだよ。では、病に苦しむ「父」を理解し、支えるのは誰の役目だったのか!? 祖母か!? 祖父か!? 父の弟妹か!? 違う! 違う! 違う! 「家族」ではなかったのか!?
 父の遺伝子に私が何年恐怖の日々を送ったと思う!? 私も父と同じように病むのではないかと、学校で教わった通りの知識に震える日々を送ったのは誰のせいだ!?
 全て、父の配偶者であり、人生のパートナーであり、家族の要であった母よ、あなたの責任ではなかったのか!? 何故、その「家族の歪み」を、最も弱い存在である私が引き受けなければならなかったのだ!?

 兄は既に就職していた。高3の私は「父から離れたい一心」で成績優秀だった。最終的に離婚を頼み込んだのは私と兄だ。「お前の就職に差し支えるから」という定番の歪んだ口実で、離婚の決定を「親の離婚くらいで差別するようなところには就職しない! 私の力でそんな差別をしないところへ就職してみせる!」と、18歳の私に断言をさせたのは誰だ!? 母だ! 母だ! 母だ! あなたには経済力があったのに、あなたは離婚の責任を18歳の娘に負わせたのだ。
 調停離婚が成立した翌日、職員室で担任に向かって高3の女の子に
「両親が離婚したので保護者名が変わりますが、姓は変わりません」
と冷静に言わせ、担任を唖然とさせたのは誰だ!? それは親のすべき仕事ではなかったのか!? なんてずるい母。なんて素直な私。

 中3の時、私をいじめたクラスメイト、私はあなた達を一生許さない。
 いじめのせいで登校拒否した私を責めた担任、私の唯一の親友だったMちゃんに友達としての責任を負わせ職員室で泣かせた担任、私はあなたを一生許さない。
 離婚後の父に向かって「あんたなんかどこでのたれ死んでも構わないんだから、早く家から出て行って!」とまで言わせ、2週間後の私の大学合格発表前夜に交通事故で死んだ父への負い目に何年も私を苦しませた、そのように「私」を教育した母を、私は許さない。
 大学のクラブの男子同級生に運営に関して意見した私に、キャンプファイヤーで「お前は男のプライドをわかってない!」とセクシュアル・ハラスメントを重ね、私を引きこもらせた何人もの男性の先輩達、私はあなた達を一生許さない。

 単位の取り損ねで留年した23歳で発病した。交通事故によるショックも影響したのだろうか? 病名は「うつ病」。躁鬱病だった父とは違う病気を私は抱いた。
 母になだめすかされて無理矢理連れて行かれた精神・神経科病院で、あるがままの私を受けとめてくれるドクターと出会えた、私の何たる幸運!
「だって、あなたは苦しいんでしょう?」
と、家族の矛盾を私が自ら理解するまで見守り、道しるべになってくれたドクター。私の人生の恥も苦痛も喜びも過ちも全て話せる懐を持ち、微笑んでくれるドクターと、初めての病院で初診で出会えた私の何という幸運! 奇跡だ!
 カウンセリングや投薬の過程で自殺未遂も何度かあった。一晩強制入院させられたこともあった。落ちつかせる為に投薬された睡眠剤で眠る私の寝顔を様々な思いを込めて見守ってくれた(らしい)ドクター!
 ここだけは心から母に感謝する。私とドクターを巡り合わせてくれて本当にありがとう!
 でもね、治療の過程で、私は理解しなければならなかったんだよ。全ての原因はあなたにある、と。苦しかったよ。認めるのが切なかったよ。神に逆らうほどの勇気が要ったよ。なのに、今でもあなたの呪縛から未だ完全には抜けきれない、あなたに逆らえない37歳の私がいるんだよ……。

 ダーリンとの出会い。これもまた奇跡としか言えない。こんな男性が世の中に存在するなんて、想像したこともなかった。最良の人生のパートナー! 彼も、実父から精神的・身体的虐待を受けた人だった。磁石が引き合うように、私達は手を取り合った。

 全てを超越する何者かが私に「生きろ」と行っているのか? いや、そうではない。「私」が「生きたかった」のだ。自殺願望と闘った年月も、自己の存在意義が認められなかった年月も。
 ダーリンは自ら進んで私に同伴し、ドクターの診察を、アドバイスを受けた。「私」を「生きさせる」為に。

 娘が生まれた。30歳にして、初めて私は無条件の「愛」を知った。娘には無条件の愛を与える! 夫婦で話し合う必要すらなかった。私達は愛を受けられないことに傷ついた。連鎖を繰り返してはならない。お互いの不文律だった。愛して愛して愛し抜く! それは「自分」を取り返す為に必要な治療だ。

 先週の長期出張で、たまたまメンタル分野のトラブルがあり、精一杯遂行したことを、担当者から散々に責められ罵倒を浴びせられた。心がズタズタになった。とにかく帰宅するまで、セルフコントロールするのに必死だった。
 それから、家族を抱きしめ、子どもを母に預けてセクハラ講演会。疲れ切っている筈の私は混乱の中、眠ることすらできなかった。
 生憎、23日は祝日だった。病院は休診。どうしていいかわからないほど混乱していた。ドクター! でも休診日に自宅まで電話はできない。(母の「常識」ね)
 夜の仕事に出ていたダーリンにSOSの携帯。でも、重大事件でどうしても帰れない。
 次に私は兄に電話した。兄の部屋電、携帯、つながらない。絶望だ!
 母よ、私が「お母さん! 助けて!」と電話したのは、あなたにも話したけど、本当の最後の手段だったんだよ。あなたとだけは話したくなかった。あなたはいつも「母の正しさ」で私を傷つけるから……2年前(最悪のうつ状態で病休を取った時)も今でも。私はあなたとの会話から逃げ回っているのに。
 その日はかつて同職だったあなたらしく、とても綺麗な言葉で担当者の誠意と配慮を語り、私を落ちつかせてくれたね。あなたにしては珍しく、
「あんたはその時、自分にできる範囲のことを精一杯頑張ったんだよ」
と言ってくれたね。嬉しかったよ。例え、その一言の重大さに全く気付いてなくても。
 後日、ドクターは「あのお母さんにしては珍しいですね。でも、お母さんの言う建て前と綺麗事はやっぱり違うと思いますけどね」と言った。そう、メンタルヘルスに関しては、元小学校教員より現役精神科医の方が勿論正しい見識を持っている。

 あなたはやっぱりわかってはいなかった。今日帰宅すると、珍しく母が我が家に上がり込んで長女と、私を待っていた。その後の様子を聞きながら、そして、こう言った。
「私(母)とお兄ちゃんは、全くお人好しで……」
「私だってお人好しだって、ダーリン(仮名@笑)に言われるよ!?」
「何を!? あんたは私の前ではいい子やと思って安心していたら、いろいろ話を聞いてみたら、裏で舌を出すような娘やないの。人が親切で声を掛ければ、ひがんで悪意に取るし……」
 ああ、やはりこの人はだめだ。何もわかってない。「あなたの前でいい子」でいようとした、愛される為に必死だった子どもの心の傷なんて何もわかってない。この15年の私の苦しみも、何もわかってない。そうして、また私を傷つける。
 母よ、私はもう諦めた。もうじき70になるあなたの人生を今更変革することは不可能だ。あなたは本当に不治の病だ。

 私はもう大丈夫。あなたを乗り越えたから。けれど、娘は育成(学童)の後、あなたの家に寄って1〜2時間を過ごさなければならない。全力で、私は娘を守らなければ。「正しさという名の抑圧」を再び繰り返されては堪らない。
 そんな話をダーとこっそりしていたら、長女がポツリと口をはさんだ。
「○○ちゃんはまじめ。でも、おばあちゃんはまじめすぎなの」
 ああ、その幼さでよく気が付いてくれた。あなたの両親は、全力で無償の愛をあなたに贈るから! どうかあなたは私のように歪むことのないように、私達はあなたを愛し、守るから!


ちゃむ |MAILHomePage

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