夢見る汗牛充棟
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水底
おれが猫になるから
撫でてくれないか
ひもじく啼くから
餌をやってくれ
不平をいうから
ちやほやしてほしいのだ
おれは本当は
お前のようになりたかったが
月曜のごみの日に袋詰めで
捨てられてしまいそうだ
おれがごみになるから
片付けてくれないか
悪臭を放つだろうが
埋めれば肥やしになるだろう
嫌な顔をしないで
拾い集めてほしいのだ
おれは本当は
お前のようになりたかったが
池に沈んだ石ころのように
ひねもす苔と傷を舐めあう
うちあければ本当のところ
おれは石ころになりたかった
年月をへて滑らかになり
疵ごと埋もれていられるような
ひもじくて啼くおれと
悪臭を放つおれ
おれは本当は
お前のようになりたかったが
ずぶずぶと潜水中の半漁人で
時折陸に這上がっては戸を叩く
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