夢見る汗牛充棟
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2003年03月31日(月) 三月の終末

今日で【清水市】が失われる。
私が育った市は記憶の懐古にだけ痕跡を留め、瞬く間に
時間の中に埋もれて風化するのだろうか。

請求書と一緒に一応住所変更のお知らせ作りをしながら一人で
根暗く、根深く怒ってみたり。だう。切ない。
てゆーか、合併カウントダウンだかで、日本平でイベント
あるんですね。今、花火の音がします。怒・怒・怒。ふんだ。

近所の堤に帰りがけに寄ってみたら、桜は今週が見ごろどころか
すでに満開に近かった。おお、なんということだ。
とりとめない考え事をしながら、ぼんやり桜に魅入る。
立つのは決まった場所。
一昨年も、去年も。これで、また一年を経た。
来年も見ることができたら幸いだな、と毎年思う訳だ。これぞ人生。
どんなことを考えていたかというと。
…ぐだぐだと散漫なことですw;

ついでに帰り道で、暇そうにしていた焼きとうもろこしの屋台に
ふら〜と吸い寄せられたものの、渡されたとうきびはこんがりと
焦げ目がつき醤油の香ばしい匂いがする、ひんやりと冷たい、
冷製焼きトウモロコシ というとても手の込んだ代物だったので、
わしゃ、泣きそうでした><


散漫な考え事メモ。覚えてるところだけ。

桜はどこまでも拡散する散漫な春という生物だ。
幹から張り巡らされた無数の細かい血管が曖昧な空に広がり
赤くはないが、先端にほとばしる無数の血のように花咲くのだ。
風吹くたびにぞわりぞわりと眼前で蠢いている。
霞のような桜の向こう側に透けるとりとめない色をした空は
果たして現のものだろうか。

その樹は。先端にあやしく灯る白いほのほの大群は
境界の向こうからざりざりと忍び寄るものの微かな匂いを放ち
しきりに人を招いている。
重なりひろがる樹の下に寄せ餌に群がるように人は集い。
歌も好く。笑いも好く。融けるように闇に宴をはる。
さまざまの人の吐き出すものを桜はおそらく啜るのだ。

人は満開の桜の間を夢遊病のように擦り抜けて行く。
桜が儚く人を置き去りにするようでいて
人は遥かに桜を置き去りにして往く。
川の向こう岸から眺める仄かに白いけぶりは桜ではなかろうか。
川を渡るのは常に人であって桜でなければ。鬼でもない。



【三月は深き紅の淵を】恩田陸(講談社文庫)
再読。二度目。まだ三分の二程度。今日中に読み終わるといいな。
柘榴・柘榴石・ガーネット・三月。



恵 |MAIL