夢見る汗牛充棟
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2006年12月13日(水) アイスランド サガ スールの子ギースリの物語 大塚光子

三省堂


図書館で借り 読了。
欲しい本なれど、現在入手不能。


荒々しく、素朴な世界に暮す人々の愛憎渦巻く物語。
血で血を洗う殺伐とした話といえばその通り。死者多数だし。
でも人物が殺伐以外にも、素敵だったり、心根が輝いたり、
意地が強かったり、あっぱれだったり……。
彼らがうだうだ心象を語ること皆無のくせに魅力的なのはすごいと思う。

ただし、前も思ったけど名前がややこしい。
やめよーよ。子供におじいちゃんの名前つけるのーと泣きたくなる。
そんで似た名前が頻出でやはり大混乱なのだった。

夜に広間の真ん中の炉を囲んで皆で集まったりして、おもむろに
英雄譚を語り始めたんだろうか。それはすごく楽しそうだ。


所々で挟まる詩は難しくて微妙だった。

自分の感覚では理解できない部分があって読み始めは
サガというのはならず者を歌い上げたものなのか? と
思ってしまったりしていたのですが、そうではなくて
不幸にして社会の枠からはみ出しちゃった愛すべき
英雄なのねと読み終わったら思うことができました。

有能な男が。世が世なら英雄になれただろうにという感慨を
込めて語り継がれたんだろうか。実在の人物なのだし。
死を予感しながらも、土地を離れず逃げ隠れしながら13年、
追っ手をかいくぐり、討ち取り生き延びるって、厳しいよなーと。

ええと、兄弟の愛憎が、血が愛がなんつうか萌え燃え。
男と女の愛も良い。友情も熱い。憎しみも熱い。
たぎってるよ。すごいなー。

復讐にやけに熱くなるから復讐がすべて、存在意義なのかと
思えば、さくっと割り切って目を瞑っちゃったりもする。
場合場合でけっこういいかげんというか、個人的な気分で
決めてるのかしらと首を傾げたくなったりもしましたよ。


やっぱ寒いところで、雪に閉ざされて鬱屈してると血の気が
多くなるのだろうか。戴国の人もアイスランドの人も。


恵 |MAIL