夢は、一夜にして消えてしまうから、夢たりうる…… 素敵な夢を見て、目が覚めてからもう一度その夢を噛み締めたい。 そう思っても、思い出そうとするほどにその記憶は、 ぼろぼろと崩れ落ちていってしまう。 あれほどに心に刻み込まれたはずの想い。 夢……。 心の谷間にこそ見た夢だから……? 忘れないように、形に記す。 でも、想いを抱き締めようとするたびに、崩れて消えてしまいそうになってゆく。 歯欠けになってしまいつつある夢達の欠片を、 少しでも失うまい、と手を伸ばす。 触れれば崩れてしまうかもしれない怖さと共に……。
「キャパシティがオーバーしているから、受け止めきれない」
そう、らしい。 あれも、これも、それも、どれも……。
「なまじわかってるから、わからなきゃいけない、としてしまう」 「わからないことをわかろうとする。わからないと言う事を自覚してても、それ自体を罪に思う。だから、キャパシティなんかすぐにあふれてしまう」
そんな悪循環がたぶん、ずっと続いてるんでしょ? もっと、楽に、いこうよ。
「これ以上楽に考えようとしたら、すごいことになっちゃうから……」
すごいってどんな? 一度でも、そうしてみたことないでしょ? ま、冗談だけど、それ一度どん、とやってみたらどう? 一ヶ月とか、何にもしない、やりたいことしかやらない、とか。 そんなことは、なかなか出来ないだろうし、勝手に勧めることも出来ないけどね。
出来るわけ、ない。
そうだよね、そりゃそうだ……。 笑いながらその人は、肩を軽く叩いてくれた。
流れてゆく勇気に憧れ、流されまいと石にしがみつく。 手を離してみれば、救われるのだろうか……?
流れてゆく後ろ姿こそが勇気。 その背中に、届かぬ手を、伸ばす……。
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