「じゃあ、一種類増やしてみよっか」 「えー、まぢ、キレイなんだけどー」 「はっはっは」 「でさー……」 こんな感じで夜のとばりが落ち、街の隙間を埋める様に人々の囁きが溢れ出す。 新しい「枷」を試しにとは言え手に入れた私は、聞き馴れない新しい武器の名前を繰り返し呟く。 「勝つ」為にではない。「負けない」為だけに、手にしてゆく。 武器を手にする程に、それに依存しきって仕舞わぬように、身を更に固くする。例え無駄な努力と理解っていても。 「彼」は様相を変え、強く暖かく、私を見下ろしている。 自分を照らすライトがあるから、夜の闇に包まれても誰かに見て貰える。だから、武器を殊更に否定はしない。 そこに立っている姿こそが、自分なのだから。 まずは、立ち上がり、立ち続ける事。 冬色に化粧直しをした「彼」は、昔も今もこれからも、東京の空の下に立ち続けている。 私はタワーの灯かりに背を押されるようにして、街の隙間に合流してゆく。 信号が変わり、たくさんの背中が流れて行く。 その中のひとつになって行く……。
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