初野晴(はつの せい)という作家の「水の時計」を読んだ。 オスカー・ワイルドという作家が書いた「幸福の王子」という童話をモチーフに現代医療世界の脳死、臓器移植、臓器売買等の問題を描いている。
「幸福の王子」 銅像の王子がツバメに自らを装飾している宝石を貧しい人達に配って欲しい、そして人々がどう受け取ったのか、喜んでくれたのか、ここから動けない自分に聞かせて教えて欲しい、と頼む。そして自分を覆っている金箔すら全て剥がして分け与えてしまう頃、手伝ったツバメ自身も力尽きて死んでしまう。 ツバメの死と共に、王子の鉛で出来た心臓も二つに割れてしまい、事切れてしまう。 みすぼらしくなった銅像をみた市長達は、すぐに取り壊させ、自分達の像を建てようとし始める。王子の像は溶鉱炉で溶かされようとする。が、王子の鉛の心臓だけは溶ける事が無かった。溶かす事を諦め、その割れた鉛の心臓をごみ溜めに捨てる事にした。そのごみ溜めには死んだツバメも横たわっていた。二人は離れる事無く最後まで一緒だった。神はこの二人を、この町で最も貴いものと褒め称えたという。
脳死と判定されたが、奇跡的にとある条件下でのみ会話が出来る女性が、己の体を移植を待つ患者に分け与えて欲しい。その運び役をとある暴走族の元幹部の一人に頼む……。病と幸せの関係を物語ったミステリー。 「王子」の女性と「ツバメ」の男との、意外な関係が明かされる。
うーん。登場人物それぞれの背景にもっと感情移入できれば、感動する作品。 でも、個人的に感情移入しきれなかった……。あっさりとひと言で表現してしまっている個所に、実はもうひと言ふた言が欲しいような感じがした。
深刻なテーマを扱っているので、中々考えさせられる作品だった。
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