「隙 間」

2006年02月03日(金) 仮想現実

 波がある……。
 時化(しけ)の海から陸(おか)に上がったばかりのように。地面は揺れては居ないはずなのに、体と言う器の中で、自分と言う液体が「チャプンチャプン」落ち着きどころない感覚。
 プールの水底で耳を澄まして水面上の音を聞いていると、みんなと同じ世界に居るけれど自分だけ別の世界から覗き見しているような、そんな感覚。僕はいつもフィルター越しに今居る世界と接している。この星の空気は僕には合わなくて、免疫をつける為の抗生物質の薬を欠かす事が出来ない。
 世を忍ぶ仮の姿。
 仮の姿の僕は、この社会に溶け込むために仕事にも就く。仕事は忙しい。でも、これが当たり前のようだ。そして、今日もまた当たり前のように朝の四時に家に帰る。今日の出社まであと四時間弱。今日だか昨日だかの昼飯から何も食べていないので腹が減っている。薬のおかげで食欲も多少抑えられているけれど、それでも腹ペコだ。朝食兼用の弁当を食べてシャワーを浴びて、二、三時間寝て、また会社へ行って……。
 現実味があるんだかないんだかわからないまま、また気がつくと仕事を終える頃は、深夜の二、三時になってて。ふつーの同年代のサラリーマンは、どうなんだろう? 「残業、残業で毎日この時間ですよ。忙しくてイヤですねえ」という会話を打合せ帰りの電車で耳にする。これから会社に帰って、またいつも通りに一時頃までお仕事。終電に関係の無いところに住むと、ギリギリまで眠れる代わりに、ギリギリまで仕事、というリスクも背負う事を痛感。
 そうか、仮の姿の自分なんだから、普通の自分のものと違うのは当たり前に決まっている。
 でも「ふつー」って、なんだろう……?


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