「隙 間」

2006年02月05日(日) 月下遁行

 久し振りに月を眺めた。
 霞がかかって、ぼんやりと彼は見下ろしていた。ぼやけた輪郭が少しだけ優しく見せる。
 何日振りだろう?
 夜空を見上げていなかったわけではない。むしろ、空の下に出る度に見上げてばかりいた。
 お伽噺のように、温かく優しくたたずんでいた。
 歩を緩める。
 吐く息が白く、体は冷たい風に逃げ出したいくらい小刻みに震えているのに、見上げている自分の心は、温かい。
 たとえ見えていなくても、そこに、いる。
 親指をそっと立ててみせる。
 爪に隠れてしまいそうなくらいの大きさにしか見えないのに、その姿を見ると、ほっとする。同じ顔の日は無い。
 でも、同じもの……。
 自分が自分のものではないように思えても、紛れもない自分。どんなに竹林に身を隠そうと、そこにいる事には変わりは無い。
 変わりは、ない……。


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