「隙 間」

2006年05月21日(日) 記憶の場所

抜け道探しのつもりだった。
いつもと違う覚えのない路地に、
フラフラと入り込んでみる。
両手を広げられないほどの、
両側には鉢植えや花が、
それぞれの玄関以外の場所を覆っている。
そのままの道幅で九十度に折れ曲がった。
こんな道もあったんだ、と小さな発見を感じていた。
曲がり角を曲がる。
思わず足が止まった。
初めてではなかった。
十年ほど昔、僕は確かに、ここで、
シャッターを切った。
この風景を、この場所を。
今はまた、目を閉じて、
心のネガに焼き付ける。
ゆっくりと現像するように、
深呼吸をする。
あの頃の僕は、まさか今の僕を想像できただろうか。
まぶたを開ける。
当然のように、僕の前には
露地がずっと続いている。
十年前の僕にほくそ笑む今の僕を
同じように十年後の僕はほくそ笑むのだろうか。
誰かの家から晩御飯の匂いが
鼻先をくすぐる。
懐かしい、あったかい、みそ汁の匂いだ。
僕はクスリと笑って、また、歩き出す。


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