雨の切れ目の湿気を含んだ空気を吸い込む。 緑の匂いが鼻の奥をくすぐった。 池の向こうには、オレンジに照らされた弁天堂が浮かんでいる。 ふう、と吐き出された空気は、混ざるのを拒まれているかのように白く揺れ、すぐにかき消されてしまう。葉を渡る滴の音がかぶさるように降りそそぐ。 首をすくめて待ってみたが、いつまで待っても落ちてはこない。 「へへっ……」 首をすくめたまま、ごまかすように笑ってみせるが、誰が見ているでもないことはわかっていた。
いや……。
茂みのブルーシートの向こうで、息を潜めて聞くでもなく耳を澄ませているホームレスには聞かれていたかもしれない。 目を凝らしてみると、鮮やかなブルーが目に焼き付いてくるような気がした。 目をそらすことを忘れかけていた背中のすぐ後ろを、シャーッ、と音が過ぎる。 びくっと背中が震え、慌ててブルーから逃れることができた。
逃れる。
そうなのだろうか。 魅せられてはいなかったのだろうか。
振り払うように首を振る。
茂みの奥のブルーに、いまだ瞳の奥で見つめ続けている自分に。
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