「隙 間」

2007年09月11日(火) 奥に潜むもの

 雨の切れ目の湿気を含んだ空気を吸い込む。
 緑の匂いが鼻の奥をくすぐった。
 池の向こうには、オレンジに照らされた弁天堂が浮かんでいる。
 ふう、と吐き出された空気は、混ざるのを拒まれているかのように白く揺れ、すぐにかき消されてしまう。葉を渡る滴の音がかぶさるように降りそそぐ。
 首をすくめて待ってみたが、いつまで待っても落ちてはこない。
「へへっ……」
 首をすくめたまま、ごまかすように笑ってみせるが、誰が見ているでもないことはわかっていた。

 いや……。

 茂みのブルーシートの向こうで、息を潜めて聞くでもなく耳を澄ませているホームレスには聞かれていたかもしれない。
 目を凝らしてみると、鮮やかなブルーが目に焼き付いてくるような気がした。
 目をそらすことを忘れかけていた背中のすぐ後ろを、シャーッ、と音が過ぎる。
 びくっと背中が震え、慌ててブルーから逃れることができた。

 逃れる。

 そうなのだろうか。
 魅せられてはいなかったのだろうか。

 振り払うように首を振る。

 茂みの奥のブルーに、いまだ瞳の奥で見つめ続けている自分に。


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