「隙 間」

2008年04月26日(土) 「Point and Line」私を繋いでいるもの

 篠原美也子、十五周年ライブ「Point and Line」

 よくないこととはわかっていても、ほぼ十五年もの間、彼女の歌や言葉と共に過ごしてきた、そのまさに集大成のライブでした。

 そして闘う気構えで臨んだはずが、戦いにすらならず、見事にノックダウンさせられてしまいました。

 セットリストに沿ってそれぞれの曲との関係を、歌詞を借りつつ記したいと思います。

01「秒針のビート」
「新しい羽根がついた日」(2001年春)から。

「時計の秒針はタフなビート刻み続け、
 できるもんならやってみろと囁く声。
 有り余る時間を持て余しては無駄にして……。

 遅すぎるかもしれない。
 だけど、こんなところで待っているよりは……」

 待たざる朝のために、いくつもの長い夜を過ごす。
 その始まりでした。

02「ひとり」
 1stアルバム「海になりたい青」からではなく、「SPIRAL」(2003年春)から。

「言葉たちはいつかあやふやを愛して、背中を向ける。
 忘れたくないことよりも、忘れたいことが増える」

 今でこそ「物書きを目指す」などと口にしていますが、当時のわたしは、まったく自己満足のぬるま湯につかっていました。
 そしてその甘さから、私の人生の中で二人目の、ひとりの人生を左右させてしまいました。

「肩を濡らして、雨は続く。
 どうにもならないことで泣きたくはない。
 雨は降り続く。
 そして、朝はくる」

 己のしでかしたことを悔やみ苦しみ、その夜の闇に浸っていても、それでも、朝はやってくる。

03「place」
「half moon」(2005年春)から。
 小説を書いていると内容によっては、「どういうつもりなのか」「そんなことを考えているのか」「信じられない」と思われてしまうことを気にしてしまうことがあります。

 何をどう、どこへ行ってしまったかと思われようと。
 必ず、ここへ戻ってくる。

 と信じていてもらわなければならないことも出てきます。
 その覚悟が足らずに中途半端なものしか書けないのは致命的すぎるわけです。
 悔しいけれど、それだけの技術もまだまだ足りないこともありますが。

04「青」
「SPIRAL」(2003年春)から。
 今まさに、です。

「身の程知らずさと、誰かが言っても、
 この思いもうどこへも帰れない。
 パレットには、また新しい青。
 そして私も、海になりたい青。

05「only you」
「us」(2005年)と「your song」(2008年春)から。
 最近、とみに自分のちっちゃさを痛感してました。

 些細なことで視野狭窄に陥ったり、自己満足だと気がつかぬままだったり。
 いうなれば、「恋愛」ではなく「恋」にしかすぎない。
 それはまだ「愛」が足りていないということ。

 一方通行では駄目なわけです。
 相手があるからこそ、それは成り立つのであって、押し付けでは、それは何ものにもないようがない、ということです。
 自分がそう思っていても、相手のことを慮らねばそれを伝えることはできない。

 全てに同じことが言えるわけです。

06「前髪」
 以前は私、短髪で前髪を上げてました。
 最近は、下げています。
 なんだか最近、涙もろいのか、そんなとき。
 ああ、ちょっと前髪が目えにかかっててよかった。
 突如、自分にいわれのないことにも関わらず、つい、にじみ出てしまったことがありました。
 ばればれでしたが。

07「Passing」
「your song」(2008年春)から。

「誰かといたらきっと甘えてしまう。
 心の中をきっと見せてしまう。
 誰だって自分にしか解らない痛みにもがいているはず。
 いつでも口笛吹いて乗り越えられるさ」

 私は自分でもわかっていました。
 寄る辺があると、それにとことん、依ってしまうことを。
 自分に甘く、たちが悪いのです。
 だから、というのは言い訳かもしれませんが、今、ここにひとりでいるわけです。

 なんだかんだといいながら、きっと、必ず、自分のどうしようもないことを理由に掲げて、それを振りかざして、相手に突きつけてしまうだろうこが。

 所詮、卑怯者なのかもしれません。

 自分だけが、自分にしかわからない、という逃げ。
 口笛を吹いてみせることを、忘れてました。

08「HERO」
 これも、今まさに、です。

「力も無く名前も無い。
 はかない日々は、はかないまま。
 始まりじゃなく、終わりでもなく、
 そこには道がただ続くだけ。

 夢から覚める時を思って、
 夢見る人はどこにもいない。
 力ではなく、名前でもなく、
 わずかに残る誇りを守る」

 わずかでも残されている私の誇りとは、なんなのでしょうか?
 それはきっと、自分でも言葉にしきれない、胸のずっと奥にあるもの。
 やっかいなんです。

09「flower」

「もしも明日、世界が終わると知っていても。
 花を植えよう、約束をしよう、愛を告げよう」

 この強さが、私には足りません。
 花なんか植えたって、明日終わっちゃうならしょうがないじゃないか。
 と、目先にとらわれがちになってました。

 後にまた触れますが、見失っていました。

10「Journey」
 これはそのままです。
 旅は長く、ゆっくりと足並みをそろえるべきものです。
 日帰り旅行じゃ、駄目なんです。

 手を、握り返してくれますか?

11「桜駅」
 未発表の新曲です。

 土手の桜。
 同じところを通り過ぎる。

 次の「S」と合わせて書きます。

12「S」
「spiral stairway(らせん階段)」の「S」という方の意味でゆきます。
 どれだけ走っても、足を前に進めても、気がつくと見覚えのある景色に辿り着いて、ちっとも進んでいない気がしてしまうけれど、それはきっと、同じところでも上へと伸びているらせん階段でありたい。
 私はいつも、そうありたい、そうに違いない、と言い聞かせて、懲りもせずに今こうしてここで、ぐるぐると同じことの繰り返しにしかみえないような日々を送っています。

それでも、

 ほんのわずかでいい。
 高いところへ。

13「永遠を見ていた」

「見えない明日を未来と呼んで、
 見えないから見えた希望を抱いて」

 見えてしまう未来には、きっと現実しか見えなかったりするわけで、見えないからこそ、知らないからこそ見える希望、というものがある。

「見えない明日の不安の中で、
 見えないもの今も抱きしめて」

 先が見えないからこその不安を、ほかの誰にも、もしかすると自分自身にも見えないかもしれないものを、今もずっと抱きしめています。
 本当は、未来を見据えて生きねばならないとわかってはいるのですが。

14「夜間飛行」
「bird's-eye view」(2002年春)から。
 先の「秒針のビート」の一年後です。

「人生は何が出来るかを探す道じゃなくて。
 何が出来ないかを思い知らされる旅だと」

 会うその肩越しに「さよなら」が見えたとしても、くり返す明日への言葉を今は、信じる……。

 待たざる朝が訪れた、その前夜の最期に聴いていた曲です。

15「逆光」
「レイディアント」(2006年春)光を放つ、の意味です。
 私がナルコレプシーの限界がきて退社を決め、じゃあこれを機にまとまった時間をかけて小説をきちんと書いてゆこう、と決めたときです。

「何をしても報われない気がして立ち尽くす時もあるけれど。
 太陽を背中に従えて、当たり前をくり返しに行こう。
 笑ってばかりいられやしないけれど、わかっていたはず。
 簡単じゃないことくらい……」

 と、その通りです。

「さあ太陽よ、背中から照らせ。
 逆光のシルエットで涙を隠して」

 何を証明しようとしてるのか?
 誰に証明しようとしてるのか?

 誰にでもなく、自分自身に、ということ。

「逆らって、戸惑って、つまづいて、立ち上がって。
 敗れ去って、また立ち上がって。
 わかっていたはず」

 そして、

「届きそうになくてもあきらめないことも」

 あきらめちゃいませんよ。
 敗れることも、つまづくことも、慣れっこですし。

 でも。

 夢は追いかけるんじゃない。
 背負ってゆけ。

 との言葉に、私は今、本当に、

 背負っているつもりでいるのか。
 背負うだけのもの覚悟ができているのか。

 もう一度、立ち返らなければならない気がします。

16「Stand and Fight」
「レイディアント」(2006年春)から。
 踏み止まって、闘って、さまにならなかろうがファイティングポーズをとって、ひとりよがりのロックンロールでも、笑われたって目一杯かっこつけて。

 今の私は、ファイティングポーズもとらず、ただひとりよがりで、笑われることを気にして、かっこをつけることを忘れてしまってます。

「心は重なり合って行くのではなく、寄り添って、時に遠く離れて。
 だけど踏み止まって愛するより他に何が出来る?」

 踏み止まること。

 カウントはまだ、セブン。
 倒れたって、かっこつけて、そして立ち上がれ。

17「流星の日」

「流星に願いを掛けた。
 どうかどうか、このまま沈黙を守る力を、
 背を向ける勇気を下さい」

 それは決して悪い意味ではなく、です。
 ときにそれが必要なときもあります。

18「空に散る」
「your song」(2008年春)新曲です。
 同じ景色の中で違う答えを抱いて、互いに描いてきた長い線の果てで出会った。そして何度も、出会う。
 喜びも悲しみも幸せも不幸せも、ひとりじゃ歩けない、生きられない。

 空に散る星の光をつないで、どんな物語が見えるのだろう。

19「葉桜」
「自分の言葉を追いかけて、追いつけなくて苛立って。
 あの夏に、あの秋に、立ちつくしてた冬の日に、
 選ばなかった扉の向こうにも確かに、人生はあった。
 生きることのなかったその日々に答えがあるような気がして」

 振り返ることにとらわれがちな私ですが、今ここにいるのは、自らがその扉を選んだことを忘れてはいけないのです。

20「Time will tell」
 なぜここにいるのか、時々わからなくなることもあります。
 それはそうです。

 だけどここがきっと自分が目指してた場所なんだと信じています。
 今はまだ見えなくて、無意味に思えても、振り向けばひとすじの道で、今はただせつなくてひとりに思えても、いつか時が経って、そう気付くのだろうと。

21「my old lover」
「your song」(2008年春)新曲です。
 流れていった時間の中で失われていった輝きのようなものがあったとしても、いつまでも輝き続けるようなものは信じない。
 はがれかけたマニキュアの手で、誰より強く抱きしめる。
 傷つけたこともあるこの声で、今でも変わることのない愛を告げてみせる。

 この気持ち。
 そう、ありたい。
 いや。
 そう、あろう、と。

 ……。

 セットリストはアンコール含め全二十一曲。最後に十五年もの長く紆余曲折の時間を共にしてきてくれた皆への思いに、思わず俯いてしまい、胸に親指をあてるいつものポーズで感謝を伝えステージを後にした篠原さんでしたが……。

 ほぼ恒例になりつつあるさらなるアンコールに、缶ビール片手に再登場しアカペラでもう一曲。

「何を歌おうか? 頭がもう真っ白で」

 に、リクエストのひと声が出たのが……。

22「願わくば」
「鉄棒に小さな指を伸ばし、自分よりほんのちょっとだけ高い、上を目指す」

 そうやって、私は今、上を目指せているのでしょうか。
 届きもしないものに、ただ手を伸ばしてみせているだけではないのでしょうか。

 と、常に確かめていようと。

 ……以上、三時間半があっという間に過ぎていってしまいました。

 終演後、膝に力が入らず、ふらふらぁとした足取りに思わず「だいじょうぶかい」と気を使わせてしまうこともありましたが、こんな時、それが二十年来の付き合いの彼であったからこそ、私も「ちょいヤバ」と笑って答えられたの
かもしれません。

 素晴らしき友哉!笑

 ここまでの乱筆乱文長文にお付き合いしてくださった方、ありがとうございます。

 また明日から、いつも通り、いや、もう一段上を目指しているはずの私とお会いしましょう……。


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