「隙 間」

2008年10月09日(木) 紅をひいて

「ソレハソウダケド」
(……ンムチュッ)
「ダカラソウイウ……」
(……ンムチュ、チュッ)

 おっちゃんとアジア系ホステスさんが、隣のテーブルで粘着性ゆたかな「チッス」を繰り返してました。

 ここはドトです。
 わたしと彼らしか、フロアにいませんでした。

 え、ええっ……?

 マンガのような「二度見」をしてしまいました(汗)

 ふたり乗りの自転車は、よろよろと、まるでふたりの気持ちのように揺れながら……ムチュっとくちびるに吸い付きながら……。

 ちゃうちゃう。
 そんな場面とちゃうっ。

「そんなとこも、キライじゃないス」
「わかったフリしても、わたしにはわかってるんだから……。ダカラソウイウノ、関係ナイヨ(ムチュチュッ)」

 ……ああっ、クソ。
 ペンが勝手に(汗)

 あれだけ「小気味よい」音の、粘着性ゆたかな接吻は、お見事としかいいようがありませんでした。

 せめて階段の踊場とか、柱の影とか、そういうとこでにしましょうや。

 もしくは、

 さりげなく
 そっと
 軽く

 とか。

 おっちゃんも、見た目が還暦を越えてそうだったから、そんなことが、とても、子どものように、うれしい、スキンシップ、なんでしょう……汗

 オレだって、自分の二の腕に吸いついて、同じくらい気持ちよい音を出してやるぅっ……。

 長袖だし、まくるのめんどうだし……。

 ちっ。
 命拾いしたなあ、おっちゃんら。

 ……それはわたし自身のほうかもしれません(笑)



 彼の唇は苦い味がした。
 それは、彼がそのちょっと前まで煙草をくわえていたからなのか。

 わたしだけがひそかに決めていた、それが彼との最後の口づけだったからなのか。

 鏡の前で、わたしは口紅をひきなおす。

 艶やかな輝きを取り戻したわたしが、向こう側に滲んでいた……。



 さあて、いきましょうか(汗)


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