「隙 間」

2011年06月27日(月) 「もうひとつの シアター!」

蛍二十日に蝉三日ーー。
たった二十日の間の為に、生命を睹して瞬く光。
頭上を舞う灯りは儚く強く、激しく柔らかい。
差し出す指に、或いはとまり、或いはすり抜け。
光放つ生命をただ見送る。
やがて草葉に消えてゆくまで。

ああやっぱり梅雨なんだな、と玉にならない汗を拭い、ハタハタと忙しなく扇子で扇いでます。

先日、渋谷区ふれあい植物センターに蛍をみにゆきました。
以前、この植物センターにチャリティーコンサートに連れていっていただいた際に、今回のイベントのことを知ったのです。
正直、あまり人に知られていないものだと思っていたのですが、とある情報番組で毎年入場制限するほどの盛況ぶりだと紹介されたのです。

決して広くはないのですが、三階吹き抜けの高さの温室に星のように散りばめられた光の粒、だったのです。
明かりは蛍の灯りのみ。
髪の毛にとまるのもいれば、ひょいと伸ばした手にとまるのもあり。
真っ暗に怖くなって泣き出してしまう子もいたり。

入場料無料なので、お近くの方はぜひ行ってみてはいかがでしょうか?
夕方四時から夜八時半入場で水曜日までやっております。

さて。

有川浩脚本「もうひとつの シアター!」

作家・有川浩が自著「シアター!」の舞台の脚本を書くことになり、それを小説化したものです。

「シアター!」内で劇団「シアターフラッグ」が地方公演で高校の文化祭にゆく場面があります。
それを、実際の劇団で舞台にしてしまったのです。

小説を書くのと芝居の脚本を書くのでは、明らかな違いがあります。
これは有川さんも書かれていますが、小説は書き手が読み手に直接イメージを伝えます。しかし脚本になると、演出、演者を通して観客に伝え、それは観客によって日々変わることもあります。
そこで思わぬ化学反応といいますか、予想外の面白さが生まれてゆくのです。

登場人物を作者が書くよりももっと登場人物らしく演者が表現してくれたり、シリアスなはずの場面に観客からクスリとこぼれそれがシリアスさをより引き立てることになったりします。

そんなギャップを本作品の中で註脚として有川さん自身の感想として書き込まれているので、読みながら舞台上の演者さんたちの姿と観客の姿を思い浮かべてとても楽しめると思います。

大和田伸也さんが演じた教師・田沼が「全力を出し切ったのか?」と問い掛けます。
転ばない程度の全力しか身に覚えがないような気がします。

蛍は成虫になると、それまでに蓄えた栄養だけで寿命が尽きるまで光を放ち続けるそうです。
どんな蓄えがどれだけあるのかわかりません。
ですが。

どうか転ぶことを恐れずに全力を出し切ったといえるものやことがある日々を、いつか振り返ることができますように。


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