2011年06月30日(木) |
「論理と感性は相反しない」 |
ビルの頭上から照りつける陽射しはジリジリと容赦なく、 逃げ水に霞む雑踏は儚く見えて黄昏を恋い焦がれる。 枝葉の隙間から降り注ぐ陽射しはキラキラと眩く、 視界の隅を渡るムラサキシジミは戯れるように視界の死角へ。
山崎ナオコーラ著「論理と感性は相反しない」
登場人物たちがそれぞれで重なり合う十四の短編集です。 ひとつひとつが短くてあれよあれよと先に進んでいってしまいます。 不真面目(お気楽さいい加減さという意味で)な自分だからこそ好きでいてくれると思っている神田川は、真面目な理論派の真野くんと同棲をしています。 性格が真反対のふたりですがケンカをしながらも仲良く暮らしています。
神田川の友人で小説家のマユミズは、音楽家の男と恋をします。遠距離恋愛です。マユミズは不器用ながら告白して始まりました。 男はマユミズの小説が好きでした。 マユミズは小説と自分は解離しているので好きな小説家のわたしを、ではなくわたしを好きなのか問い詰めます。
「きみのまつ毛が好きだから、てだからあなたが好きなわけじゃないってわけじゃないでしょう?」
マユミズはふと漏らしてみた友人に言われます。 そして、好きということがよくわからなくても恋をしそれは小説を書いてゆくのに必要なことで、だからわたしと小説家のわたしは同じわたしなんだと決めます。
神田川と真野くんは別れて数年後にまたふたりが暮らしていたアパートが取り壊された跡を観に再会します。 マユミズと神田川はふたりで日本の裏側ブエノスアイレスに旅行にゆきます。
散文的な十四のお話がどこか細い糸で繋がり紡がれてゆくのです。 なんとなく川上未映子さんの作品とも雰囲気が似ているような読後感ですが、サラサラと降って通り過ぎていった通り雨のような不思議な感じでした。
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