白日の独白
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寝惚けた頭を抱えて裏門から入ると、硝子越しに貴方の姿が見えた。 貴方は僕の存在には全く気付かなくて、僕の斜め後ろで知り合いと軽く手を挙げて挨拶していた。 僕は貴方だと解っていたけれど、貴方じゃないかもしれないからと通り過ぎた。 だって貴方が黒のスーツに赤いシャツを着ている姿なんて見た事がない。 もしも『次』に会えたら、その時はちゃんと声をかければいい。 僕はまたそうやって逃げ出した。
『幸福は前髪しかないのだから迷わずに掴みなさい』 掴んだものが幸福だなんて、一体誰にわかるというの?
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