自分では最後まで捨てられない虎を、他人には皮も牙も残さないで殺させる。「殺されるよりは、手放すことを覚えた方がいいと想います」僕は至極真っ当なことを口にしたが、言葉にするとそれは随分空ろであった。身に降懸る不幸を嘆くことが心地好くて、態態そう仕向ける人間も居る。一般的に不幸であることが個人的な幸福であったって別に構わない。僕には何処までも無関係なことだし、そういう人間を嘲うのは案外心地好い。