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公園とベンチ 2006年09月25日(月)
高校3年生の時、中学3年生の女の子を好きになった。
学校帰りにぼくが仲間とよく行くその公園は、川沿いの舗道をまっすぐに行き、橋を渡った向こう側の銭湯の横にあった。学校からさほど離れているわけでもないが、通学路から少しそれていた為、あまり人気が少なく目立たない公園だった。いわばぼくらの隠れ処的な場所だった。
そんな公園に時々来ていたのがその子たちだった。3人の中ではあまり目立たないその子は、よくテレビに出ているYの初期の頃の顔にどことなく似ていて、少し陰を感じる女の子だった。でも、そう感じるのはほんの一瞬で、友達と笑顔で喋る姿は無垢な少女のようだった。
その落差が次第に気になりはじめ、仲間と話しをしている最中もぼくはその子に意識が向いていた。人気の少ないその公園に来るのは、いつもぼくたち3人と彼女ら3人だけで、その中でぼくの意識だけがその子に飛んでいた。
そんなぼくの視線に気がついたのか、一瞬ふたりの目と目が合った。その瞬間、その子の表情はこわばり、無垢な少女からまた少し陰を含んだ寂しげな女の子になった。その彼女の顔が深く強くぼくの胸に突き刺さり、でも確実に彼女に惹かれていくぼくは、すぐに彼女から視線をそらした。
公園には木製の古びたベンチがふたつ、少し離れた位置にあった。そのふたつのベンチの間には、そんには広くない砂場と小さなスベリ台があった。
いつまでも続くと信じていた夏は少しづつ終焉に近づき、西に焼けた空の色は確かに8月の色とは変わっていた。その夕陽が彼女の横顔と座ったベンチをいつまでも照らしていた。
つづく。
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