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公園とベンチ 2 2006年09月26日(火)
いつもの公園にその日ぼくはひとりで来ていた。
公園にはいつものように彼女たち3人が、砂場の右側のベンチに座っていた。ぼくを見て何やらヒソヒソ話をしているようだったが、かまわずぼくは離れた左のベンチに腰掛けた。すると他のふたりは彼女だけを残しどこかに行ってしまった。
砂場とスベリ台をはさみ、少し離れた距離を置いてぼくと彼女は互いに照れ笑いをするのが精一杯だった。
こんな時間には珍しく、砂場では小さな女の子が小犬とじゃれ合っている。その様子をふたりはただ黙って見ながら、時々砂場越しに顔を見合わせ同じタイミングで笑い合った。そんなふたりだけの共有した時間が永遠に続けばいいとさえぼくは思った。
その日の夕焼けは一段とオレンジが濃く、砂場にはスベリ台の影が長く映っていた。夏の終わりを知らせる蝉の声が公園に木魂していた。
砂場の女の子はいつの間にかいなくなり、またふたりきりになった。
「明日もくる?」 「うん」
ふたりは初めて言葉を交わした。
つづく。
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