くじら浜
 夢使い







公園とベンチ 5   2006年09月29日(金)

公園にも木枯らしが吹き始めていた。
いくら南のくにだからといってもこの時期はかなり冷え込む。
とくにその日は寒かった。

公園でふたりで会うようなっても、ぼくも彼女も時々は以前のように仲間たちと一緒に来るときもある。そんな時は、皆気をきかせて離れた向こう側のベンチに行ったり、公園から出てよそに行ったりしていた。

その日ぼくはひとりでベンチに座り、彼女が来るのを待っていた。
しばらくして彼女は友達と一緒にやってきた。彼女はぼくに見向きもしないで友達ふたりともうひとつの離れたベンチに腰掛け、そして楽しそうにお喋りを始めた。ぼくは黙ったまま彼女がこっちに来るのを待っていた。しかしいつまで待っても彼女はこっちに来ないし、友達ふたりも動こうとはしない。

次の日ぼくは彼女を責めた。なぜぼくを無視したのかを問いただした。
彼女は何も言わず、黙って下をうつむいた。いや・・というかぼくの激しい口調に驚いてなにも言えなかったのかもしれない。考えてみればぼくより3つも年下の中学生の女の子なのだ・・
ぼくはすぐ後悔した。たあいもない事でいらだっていた自分と、そんな感情をただやみくもに彼女にぶつけたこと、そしてなによりも彼女を傷付けてしまったことを後悔した。
泣いている彼女を前にぼくはどうすることも出来なかった。ただ「ごめん」と言って彼女の泣き止むのを待つことしかできなかった。

木枯らしの寒い日だった。


   つづく。







初日 最新 目次 HOME