2003年07月07日(月) |
A day at the races(CEOシリーズ番外編) |
こんばんはん。桂子です。
4編アップいたしました、CEOの創作ですが、 役職の説明もないままに、既成事実のように連呼しまして、 申し訳ありません;。 注記を付すにも機会がなくて、どうしよう〜;;と悩みましたが、 ご紹介を兼ね、ちょこっと彼らの仕事の様子を書きました。 よろしかったらご覧になってくださいませ… (…あの、ただのお仕事シーンです…萌えとかないですすみません;)
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『A day at the races』
“Chief Executive Officer”
執行役員制という、新しい経営方式下での、経営責任者の呼称。 SONYをはじめ、国際企業で近年導入されつつある。
従来の会長・社長に比して、権限が拡大する一方、 経営結果の責任は、一層厳しく追求される。
「CEO」
「うん?」
「財務部のほうからたった今、PL(損益計算)の速報が来ましたよ。 ご覧になりますか?」
52階の役員フロア。 その最奥の――執務室。
全面窓を、背後にし。 特注の椅子に座った彼が、「うん――見せて。そちらに行くよ」と 見ていた書類を机に置いた。
「当期の利益はこちらです」
「ああ…予測の範囲だね」
「よかったです――。つい先月に、上方修正をしましたから。 これ以上大きな利益が出ると、かえって信用を無くします」
「アナリストたちは厳しいからね。財務部もこれで顔が立つ。 私も首が、繋がったかな」
「またそのような、冗談を…」
くすくすと、笑いが零れ、緊張の糸がほぐれ出す。
「二期連続の、増収増益。あなたがトップに上がられてから、 ずっと、右肩上がりです。 退陣を要求する者は、万に、一人もいないでしょう」
「…君が、それほど私のことを、評価していてくれたとは。 嬉しいよ。藤原君」
「…私も会社が安泰で、嬉しいです。CEO」
にっこりと、笑って云えば。
彼は、わずかに眉根を寄せて。
「あのねえ藤原君…」
と、恨めしそうな、目で云った。
「冗談ですよ。CEO。 あなたはとても――優秀で、 経営センスのある方で。 私は尊敬しています。 できるなら――あなたと長く、仕事をしたいと思っています」
「それじゃあ君と、いられるように、一層仕事に励むとしよう。 ――こういう答えが欲しいのだろう? 操り上手な秘書君は」
笑って彼が、私のあごを、くいと、斜めに持ち上げる。
「よくお分かりで、いらっしゃる。 さすがは橘CEO。
でも冗談は、さておいて。財務の皆を、労いましょう。 徹夜でまとめたそうですから」
「仰せのままに。我が秘書殿――」
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