白虎草紙
『遙か』の白虎組についての四方山話、SSなどです。

2004年10月16日(土) 心で撮られたものだから

○映画『誰も知らない』に寄せて

※話の筋には触れないですが、個別の(ネタバレにならない)場面に
言及いたします。これからご覧になられる方、
前情報は一切なしで、ご覧になられたい方は、
本日の日記は閲覧のほう、ご注意くださいませ。)




人の手が、それより小さな手を握る。それが、こんなに
優しく撮られた映画を見たのは
初めてのことでした。


あの手。観ていたみんなの胸を、あたたかに詰まらせたあの手はきっと…
監督や作り手のてのひらだと。そういう気がします。


監督の是枝さんは、テレビマンユニオン出身の人。ここは、社会的な
ドキュメンタリーの番組などを、テレビ局におろすプロダクション。
そんな経歴がきっと活きたのでしょう、映画だけれど、事実のように。
ことさらこちらを煽らず、淡々と子供を追い続ける。

この筋であればもっとその場で観る者の感情を発散させる、
映画にきっとできたでしょうに。
そうはしない、一過性の興奮、感動はあえて求めない。
感じろと強要しない。

だから、小さなシーン、筋に関係のない、空の色だとか
雲が光っていたとか、そんな何でもないシーンが響く。
家に着いても朝起きてもまだ目に焼きついている。離れない。

何ができるんだろう、何ができただろうと、当事者になって
考える。映画の意味、作り手の想いをもう一度映画を
巻き戻し再生し考える。

そんな映画を観られて嬉しいと本当に思う。



パンフレットがまた秀逸。
一時間強ほどかけて読み、これだけで泣かされた。


以下、監督・是枝さんの言葉より引用いたします。
(この映画は実際の事件をもとに作られたもので、
それを踏まえた言葉になっています。)


「ここまで事件を辿って来た時に、
僕はこの少年がいとおしくてたまらなくなってしまったのである。

甘く聞こえてしまうのは本意でないのだが、もしそばにいたら、
僕は彼の肩を抱いてあげたいと思ったのだ。
「よく頑張ったね」と。
「僕は君のことが好きだよ」と。
しかし、現実にそうすることは不可能だった。だから僕は、僕の
心の中で彼をしっかりと抱きしめるためにこの映画を
作ることを決意した。」



(『誰も知らない』 パンフレットp41 p/bシネカノン より)





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