白虎草紙
『遙か』の白虎組についての四方山話、SSなどです。

2007年02月22日(木) ロシアの天白虎

 
  
 
優しさにつき、あれこれと、考えていたとき。

或る小説の、或るキャラが、思い出されました。


あまりにも、優しくて、
読んでから、日を経ても、
この胸を、痛ませる、
ムイシュキン公爵。


彼は、「白痴」という題の、
長編ものの、主役であり、
自分が「ロシアの鷹通」と、
心ひそかに呼んでいる、
年齢二十六、七の、青年なのですが。

台詞をひとつ、見てみても、
彼が、どんなに純粋な、
心を持った、人物か、
天白虎的な人物か、
見える、気がします。



「どうぞ聞いてください!私もおしゃべりするのがよくないことは知っています。むしろいきなり実例を示したほうがいいのです。…(中略)…私は一本の木のそばを通り過ぎるとき、それを見ることによって、幸福を感じない人の気持がわかりかねます。人と話をしながら、自分はその人を愛しているのだという想いによって、幸福を感じずにいられるでしょうか!ああ、私はただうまく表現することができないのですが……すっかり途方にくれてしまった人でさえ、これはすばらしいなと思うような美しいものが、至るところにころがっているではありませんか。赤ん坊をごらんなさい、神々しい朝焼けの色をごらんなさい、育ちゆく一本の草をごらんなさい、あなたがたを見つめ、あなたがたをいつくしむ眼をごらんなさい……」

「白痴(下)」 pp534-535 ドストエフスキー 木村浩訳



彼の持つ、正義感、
一途さと、優しさが、
天白虎好きな自分には、
ちょっと、たまりません…



そして、ここからこの日記、
「ふじょし」のモードになりますが、
こちらのロシアの天白虎、
レフ・ニコラエヴィチ・ムイシュキン公爵は、
実は、実は、実は……

頭がよく、かっこよく、
ちょこっと粗野な、青年に、
やばいだろうと、いうほどに、
執着され、ストーカーされ、愛されていまして。


下の、シーンを読んだとき、
私は思わず目のやり場に、
困ったほどでした…


「足がいうことをきかないんだよ」公爵はつぶやくように言った。「こわいからなんだ、それは自分でもよくわかっている……こわいのがやんだら、立てるさ……」
「じゃ、ちょいと待ってろよ。おれが二人の床をとっちまうから。そして、おまえさんはもう寝るといいや……おれもおまえさんといっしょに寝るからな……それから話を聞こうじゃねえか……だって、おまえさん、おれはまだわからねえんだからな……おれはまだすっかりわかっちゃいねえんだから。(略)」
 こんなわけのわからない言葉をつぶやきながら、ロゴージンは床を敷きにかかった。
どうやらこの二つの床は、もう朝のうちから彼なりに考えついたものらしかった。前の晩は長椅子の上で寝たのだが、長椅子の上では二人並んで寝るわけにはいかなかった。ところが、彼はいまやどうしても並んで床を敷きたかったのである。そこで、彼は懸命になって、二つの長椅子から大きさの異なるクッションをはずし、部屋の端から端へと突っきって、厚いカーテンの入口のすぐそばまで運んだのである。なんとか寝床ができあがった。彼は公爵に近寄り、歓喜にあふれて、やさしくその手を取ると、助けおこして、寝床のほうへ連れていった。

(「同」 pp660-661)



……「彼はいまやどうしても並んで床を敷きたかったのである。」


……「歓喜にあふれて、やさしくその手を取ると、助けおこして、寝床のほうへ連れていった。」



…うん、わかるよロゴージン。
公爵かわいいもん…




恐れ多くも文学で、
いけなく萌えて、みましたが、
このシーン、ここからが、
涙ぐむほど切なくて、
何度も何度も思い出し、
じん…となっています。



作者、ドストエフスキーに、
「無条件に美しい人」、
「完全に美しい人」と、
云われたムイシュキン。


あまりに心が優しいと、
人は、この世でどうなるか、
その、切ない解答が、
書かれた名編です。









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