鶴は千年、生活下手

2003年03月12日(水) サンダーバード

今、ケーブルTVで「サンダーバード」を見ながら書いている。

サンダーバードといえば、その昔、良く見ていたものだった。
デジタルリマスター版というものが放送されるようになって、夫
と二人で何話かを見た。
昔に見た画像とは比べものにならないくらいきれいな映像だった。

コンピュータグラフィック(CG)が氾濫している現在のTVや
映画の中にあって、全部が人形と模型というこの番組は、今でも
すごいと思う。

銀行員時代、外国部からシステム部に転属になった同期の男性の
動き方が、サンダーバードチックなのに喜んでいたりした。
それも、6歳下の後輩の女の子と一緒に喜んでいる始末で。(笑)
その彼は、大学時代から10年越しの交際をしてきた女性と結婚
したのだが、奥様はインテリアデザイナーで仕事用の名刺は旧姓
のままという方だった。
その当時は、身近なところに旧姓の名刺を持って仕事をしている
という女性がいなかったから、わたし達女子社員には憧れだった。
彼も奥さんも、なんだか洗練された感じで、偏見に満ちた銀行員
の夫婦象を払拭してくれた。

わたしは、ほんとに銀行員に偏見を持っていたのだった。
なぜなら、やはり同期の男性に、結婚が決まったのに本当に直前
まで回りに知らせずに過ごしてきた理由を訊ねたときの返答とい
うのが、こうだったからだ。
「婚約しただけだと、上司に報告できないんだよ。
 本当に結婚するのが間違いないと確信するまでね。
 だって、婚約破棄だとかになったら、出世にひびくからさ。」

その同期は悪い人ではないし、どちらかというと好きな方だった。
だけど、その返答を聞いた時に、ああ、この人はほんとに銀行員
なんだなぁって思ったのだった。
わたしが銀行員を恋愛の相手や結婚の相手にしたくないなと思っ
たのは、この返答を聞いてからのことだった。
わたしには、幸せいっぱいの時期に、隠しとおすなんてできない
から。

この返答をしたのは支店から転属してきた人で、サンダーバード
に似た人は外国部、国際部が長かった人だった。
サンダーバードと呼ぶわけにもいかないので、「サンダーちゃん」
と陰ながら呼んでいた。

母が亡くなった平成元年の秋は、ちょうど税法改正に伴う大規模
な変更があったときで、システムの切り替え時期にも関わらず、
わたしが母に着いていられたのは、切り替えの確認段階だったと
いうこともあるが、サンダーちゃんが任せろと言ってくれたこと
と、後輩ががんばってくれたからだった。

「お通夜にも、告別式にも行けないが、システムの切り替えは
 任せておけ。」
これが、お通夜の日にサンダーちゃんから貰った伝言だった。
うれしくて、涙が溢れた。

 声にした口調までもが伝わって言葉の影の言葉を聞いた(市屋千鶴)


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市屋千鶴 [MAIL]