鶴は千年、生活下手

2003年03月20日(木) 水仙のこと

昨日の午後、薬を貰いにお医者さんに行った帰り、公園の周りや
家々の庭先に水仙の花を見かけた。

水仙って、なんだか土をあたためているような感じがする。
うつむき加減の花が、スタンドライトのように見えたりもして。

水仙の花には思い出があってね。

中学三年になる時に転校したわたしは、しばらくの間、母の実家
から自転車で通っていた。
市営住宅には、布団なんかを運び込みはしたものの、まだ住める
までにはなっておらず、雪が消える頃になっても母の実家にいた。

そのころのわたしは、一番大きなサイズの制服をぴっちりとさせ
て髪を男のこのようにショートカットにした女の子だった。
自転車で学校に行くと、かなり早い時間についてしまう。
教室には一番乗りだった。
教室からグランドを見ていると、同じクラスの遠藤君が歩いてく
るのが見えた。
彼が2番目に教室にくる生徒だった。

遠藤君はわたしと同じ班になっていて、隣の席だった。
朝早くから教室で話をしてくれた最初の同級生。とてもいい人。

ある日、帰ろうとして自転車のところに行くと、自転車の前かご
の中に一輪の水仙が入っていた。
誰が入れたのだろうか。
わたしの自転車とわかっていて入れたのだろうか。
一瞬のうちにいろんなことを考えたわたしだったが、きっとこれ
は何かの間違いだと決めつけて、水仙を前かごに挿して帰った。

翌日にその話を教室ですると、いっぺんにあらぬ噂が広まった。
その水仙は遠藤君が入れたものだという噂。
もちろん、遠藤君はそんなことはしていないと言った。
遠藤君は本当にそうしていたら、していないとは言わない男の子
だったから、本当に遠藤君ではないのだろう。

それでも、ずっと男の子みたいに暮らしてきたわたしにとって、
その水仙の花と噂になったこととは、とても気恥ずかしくその実
ちょっとうれしいことだったのだ。
いつも、水仙の花を見ると、遠藤君を思い出す。
遠藤君、やさしかったなぁ。

水仙で詠んだの歌のあれこれ。
 ひたむきに小首をかしげ吾を見る幼子に似た水仙の花
                      (1998.4.14 市屋千鶴)
 自転車のかごに一輪水仙の花は夜道を照らすカンテラ
                      (1998.4.14 市屋千鶴)
 残雪に陽光(ヒカリ)あつめて水仙のうつむきがちに土暖める
                      (1999.12.22 市屋千鶴)
 始まりの予感を秘めた風が吹く校庭のすみ水仙の花
                      (2000.3.22 市屋千鶴)

ちなみに、作者は三首目が好き。

 わたしにも微笑みかけてくれたから遠藤君てば水仙みたい(市屋千鶴)


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