生まれつき特殊な才能がある人とか、由緒ある生まれの人とか、ファンタジーの主人公はそういう人が多い。 でも、残念ながら現実の世界では、ある日突然美形の騎士が現れて 「あなたは失われた由緒ある王国の姫君だ」 などということはない。 私はごく普通のオバさんで、美形の騎士も王子様にも会えそうにない。
が、私は本当に平凡なのか? 何か人と違ったところはないのか? などと思い、探してみたりする。なかなか美形の騎士にあう夢は捨てられないらしい。 残念ながら、銀髪でも銀目でもない。額に星が埋まってはいない。体中探しても、ルーン文字の痕跡はない。親と生き写しでは、捨てられた王家の姫の可能性も薄い。
そうだ……。裸眼で視力が左右1.5だ。現代人でここまで視力がいい人は珍しい。これは、ファンタジーの住人である証拠にはならないだろうか? だが、ダンナも同じく1.5だった。理系人を名乗り、一切の不思議事を否定するダンナと同じでは……。(−−;
そうだ……。小足であった。22cmで、しかもハサミで切ったように、指の長さが揃っている。珍しいとまでもいえないが、少し変わっていないだろうか? だが、ダンナの足はもっと変わっている。なんと、中指が非常に長く、まるで妖怪変化かゴブリンなのだ。靴に引っかかるため、彼は中指を常に折り曲げている。もちろん、靴下の穴は、親指ではなく中指のあたりにできる。 ダンナのほうがよっぽどファンタジーの住人らしい足なのだ。
困った……。やっぱり私はファンタジー世界らしい特徴がないのだろうか? あ、そうだ……。指紋。 私の指は、やっぱりハサミで切ったように短く丸っこい。指先を見ると、すべての指紋が美しく渦を巻いている。 人の指紋には、渦巻きになっているものと流れているものがあるらしい。 すべての指が、渦を巻いているのは結構珍しいそうだ。 どうだ! 参ったか!
これで、ある日突然「あなたは珍しい相をお持ちじゃ……」とか言われて、ファンタジーの世界へ旅立っても不思議はない。 でも待てよ……。足の指の指紋は、流れている。 これじゃあ、ファンタジー界へは足止めね。 仕方がない。この世で楽しく生きていきましょうか……。
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