カタルシス
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2002年07月31日(水) |
人生はドラマよりも劇的だ |
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仕事の後 突然社長が食事に行くと言い出して私と社員さんが1人つかまった。 定期が期限になるから 日付が変わる前に帰りますから! と宣言はしたものの、どうせ終電に間に合わないのは目に見えている。早めに買っておくんだったと後悔しても 間に合いそうがなかった。
信濃町の事務所からタクシーに乗って 四谷荒木町界隈へ繰り出す。社長のいつものコースだったが、新しい店を見つけたというので いつもの行きつけではなく別の店に連れて行かれた。 『に○家』と書かれたのれんを「『にわや』?」と読んだら「『にわけ』です」と店員に返された。どんな意味があるのか全然解らない店名だなぁ… と内心思うが「そうですかー」とお茶を濁して入店着座。福岡餃子のお店で、ウリは一口餃子と豆腐だそうだ。よく解らないセレクションだなぁ… と内心思う。
2時間くらいで開放されたので、終電で帰れそうだった。喜んで四谷三丁目の駅へ向かおうをしたところを社員さんに止められた。 「『さかもと』に寄っていきましょう!」 『さかもと』というのは社長いきつけの小料理屋で、食べに行くといえば『さかもと』、接待といえば『さかもと』といった具合に 足繁く通っていた店だ。しかし、先日ちょっとしたトラブルがあり 以来パッタリと訪ねなくなったらしい。社長のお気に入りだった所為もあるし、うちでDMも作ってあげていた時期があったので私も直接店主とやり取りしているし、いつだかは母をご馳走に連れて行ったりもした。 ここはひとつ 挨拶に伺った方が良いだろう、ということになった。なってしまったので、泣く泣く駅を後にしたのである。
ひとしきり餃子屋で食事を済ませているので、軽いものを頼んで世間話… というか、社長の話を肴に杯を重ねていく社員さんの横で 日本茶とお茶請けで相づちを打つ私。あまり好ましい客とは思えぬ2人の来店を 店主はことの他喜んでくれた。どうもうちの社長との不和を気にしていたようで、 「Mさんと これさんが来てくれるってことは まだHさんとの縁は断ち切れてないと思って良いよね」 と言っていた。Mさんってのは社員さんのことで、Hさんはうちの社長ね。 なんでトラブったのか知らない私が 微妙な顔をしていたのに気付いたのか、店主はいきさつを話してくれた。 「先日Hさんが来て下さった日に若い女の子のお客さんが来て盛り上がっていたんですけれど、どうもその声が耳に障ったらしくて 客を選びなさい!とお叱りを受けました。その日のお連れ様が大事なお客様だったらしいんですよね。それでもうちにしてみたらHさんも女の子達もお客様には違いない訳でして…」 そらまぁ、そうだわな。常連に叱られたからって 楽しんでいるお客さんに水を差すのも店主としてはナンだよねぇ。
「その日Hさんのご予約があったなら、やたらなお客さんがかぶらないように手配もしたんですが飛び込みだったものですからね。しかも女の子達の方は前々からのご予約のお客さんだったんですよ。」 うちの社長が我が儘を言って 申し訳ありません。って感じだったねー(苦笑)社長と店主、双方から事情を聞いている社員さんは「しょうがない人だよな」って苦笑い。一件の後も店に通っているのだから 社員さんの軍配がどちらに上がっているかは明白だった。 「それは災難でしたね…」と言ったら 店主が笑って付け足した。 「その女の子達っていうのがEさんのお友達でね。もちろんHさんには言わなかったけど(苦笑)」
Eさんとは以前うちに務めていた私と同年の女の子だ。この店のアルバイトをしていたのを引き抜かれて(?)社長秘書として採用されたのだが、日に日に社長のお天気屋加減に我慢できなくなってきて イライラしていたところを突然解雇された、非常に気の毒な人だ。同年で偶然にも共通の友達がいたことに縁を感じたし、人柄もサバサバしてて結構気が合っていたので とても残念だった。 何が残念かって、結果的に社長と縁が切れたことは良かっとして 突然『解雇』っていうのがイヤだったよね。辞めるなら彼女の方から三行半を突きつけてやれば良かった。もちろん当人も考えていたみたいだけど、「負けるみたいで悔しいからもう少し頑張る!」って言って気張ってた。それが裏目に出ちゃったのが とにかく悔しくてね。 過日 社長の気分を害したお客さんというのが、その彼女のお友達だった訳だ。
「え、縁(えにし)を感じる!」と思わずのけぞった。 「Eさん元気でいるよ。今度一緒に飲みにいらっしゃいよ。」 店主は何もかもわかっているような顔で 軽くそんな声をかけてくれた。ここが社長の行きつけだと知っていても時々飲みに来るというEさん、社長に会うよりも この店主と疎遠になることの方が嫌だったんだろう。そんな気持ちはよく解った。
…で。 結局終電なんて乗れなくなる訳ですよね。Mさんは端からタクシーで帰るつもりだから、心おきなく泥酔しているし、私ももう電車では帰れない時間だったので Mさんと一緒にタクシーに乗ることになった。彼は国立在住なので方向が同じなのである。 これまでも何度となく同乗して帰っているのだが、毎度毎度お説教を食らうので ぶっちゃけた話あまりご一緒したくない。酒入ってるからくどいし、降りるまで1時間以上あるんだもん(涙)
ところが、今回は深酒が過ぎたのか 乗り込んで程なくしてウトウトとし始めた。おお?これはもしかしてラッキー?と思ったのは大間違い。このことが 後々大問題を引き起こすのだ。
「高速に乗って『国立・府中』インターで降りて下さい。降りたら道教えますから…」とまず告げた社員さん。四谷三丁目で乗ったタクシーは交差点を直進して弾丸道路へと向かう。私は一瞬「?」と思ったが、今更引き返すこともできまいと黙っていた。
「ちょっと!運転手さんなんで高速に入らなかったの?!」突然社員さんの声がした。四谷三丁目で「高速」といったら『外苑』のインターから乗るのが通常だ。私の「?」もその為だったが、そんな大事になると思っていないから 声をかけそびれてしまった。
「こんな渋滞する道わざわざ選ぶなんてどうかしてるよ。どうするの?ねえ!」 酔った上に食ってかかってる。ちょっと怖いです… 運転手さんの方も口ごもって言い訳しているみたいにゴモゴモ言っているので更に始末が悪かった。すぐに謝って次なるルートを取れば良いのに、 「え… 戻り…ます?でも、ここまで来ちゃったら戻れないですよねぇ… どうしましょう。えっと、あの…」 こ、これはマズイな運転手さん 要領悪すぎだ(><;) 「メーター止めて下さい」 ひぃぃ、間違いなく怒ってるし! 「え、でも…」 「止めて下さいッ!」 う、運転手さ〜ん!
結局戻るに戻れない大渋滞だったので、仕方なく次のインター『初台』から高速に乗る。メーターは動いたままだ。 高速を走っているうちに また社員さんが睡魔に襲われた。私はボンヤリ電灯や標識を眺めていたが、車が出口に向かったので、道を知る社員さんに声をかけて起こした。すると、 「…ここどこ?」 はい?
高速の出口なんてどこも似たような風景だし、何度か一緒に帰っていたけれど私にはその違いがわからなかった。泥酔していた社員さんが寝ぼけているのだと思った。ところが、 「運転手さん、どこで降りました?」 「…」 「運転手さん!」 ま、まさか また間違えたの?! 大丈夫かこの人ー!
「僕は『国立・府中』っていいましたけど、どこで降りたんですか!こんな道僕知りませんよ、どうやって帰るんです。」 「あー… ええと確か『調布・府中』だった か、な。」 「違うじゃないですか! ちょっと地図持ってるでしょ、見せて下さい!」 …ま、マジですか? 私起きて見てましたけど、ちっとも気付きませんでした。や、役立たずですか??
「運転手さん寄せて。停めてこれを見て下さい、ホラ。」 「あー… 違いますね。出口…」 おいおいおーい! なんでそんなに要領を得ないんだこの人はッ(泣)これ以上社員さんを怒らせるなヨ〜! 「1つ手前で降りちゃいましたね。入り口も間違えてましたけど高速のインター知らなかったんですか?」 「…ええ、まぁ はい。」 「知らないなら聞けば良かったでしょう、何で聞かないんですか。運転手さん出身は?」 「はぁ、秋田ですぅ」 「東京来て何年目ですか」 「3… 年かな。」 「3年?3年も居て知らないの? …タクシー運転するなら少しは道を勉強しなさいよ。」 「はぁ…」 「せめて高速の出入り口くらいは 覚えておくんですね。」 「はぁ…」 「で、この後どうします?僕は1銭も支払う気ありませんよ。」 「…え?」
泥酔していたハズの社員さん、すっかり酔いが醒めてしまったようでビシビシと運転手さんを追いつめ出した。 「このまま家まで送ってくれるのか、くれないのか。降ろすにしてもここで降ろされても困りますから、次のタクシーが捕まえられそうな駅まで連れてって下さいね。あなたが決められないなら会社に電話しますから。あなたは悪くないんですよ、道のわからない人を運転手として雇っている会社が悪いんです。あなたの上司の人に僕が話をつけますよ。」 あからさまに脅しですわな。さすがにのんびり運転手も「会社に電話」にはビビったらしく、それだけは勘弁して下さい!と頭を垂れた。それでもまだ「…1銭も、ですか?どうしても無理ですか?」と、弱った声を漏らした。 うーむ、この状況でよく言えたなぁ… もしかして恐いもの知らずなのかな。一見一方的に気の毒そうに見えるけれど、冷静に考えれば被害者は私らの方だし。冷静に考えるほどに 悪いのは運転手さんなんだよなぁ… さすがに助け船も出せません。
結局、なんとか国立駅まで辿り着き そこから社員さんの指図で彼の家まで行ってタクシーを降りた。無論お金は1銭たりとも払っていない。 「時々いるんだよね、ああいう人。昔は半額とか払ってやってたんだけど、本当は良くないんだよねそれって。可哀相だけどあの人のためだよ。」 なんてことを社員さんは言った。そんなものなのかなぁ… と感心しながら、ふと気付く。
私はどうやって帰るのでしょーか!
「大丈夫、大丈夫。俺が送っていくから。ちょっと家来て。」 大丈夫じゃねーだろー!さっきまであんなにデロンデロンだったくせに!!彼の家には同棲している彼女さんがいると知っている。彼女とも面識があったので、もしかしたら運転は彼女がしてくれるのではないか?という淡い期待を胸に、仕方なくご挨拶に向かうことになった。
ちなみに時刻は 夜中の2時です。 普通の人だったら寝てるっちゅーの(^^;) プログラマーをしているキャリアウーマンの彼女さんだから仕事しながら起きて待っててくれるんだろぉ!本当にもう。
「ああーん、これちゃん久しぶり〜v」 夜中にそぐわぬ明るい声。社員さんはとって返して「送ってくるから」と言った。 …やっぱりアンタが運転すんのかい(--;) 「私も行くー♪」 部屋着の上にワンピースを被って 彼女がついてきた。手には何やら山ほどのジュースが… 「これMさんの実家から送ってくるの。たくさんあるからお裾分け〜」 ビン入りの『ゆずジュース』だった。 見たことない商品だった。 ガチャガチャと8本 袋に入っている。 「ちょっとマズイかも知れないんだけど〜」 「マズイとかいうな!」 「えへへ〜」 はいはい、ご馳走様。私もいい加減 早く家に帰りたいです…
すっかり酔いの醒めた(自称)社員さんの運転で、駅近くの自転車置き場まで送ってもらい そこから自転車に乗って えっちら おっちら 自宅に到着。 もう何もする気になれなかったけれど、それでも汗かきの私は根性でシャワーを浴びてから布団の上に転がった。時刻は3時を過ぎた頃。
明日も平日なのに…
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