カタルシス
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季節毎に高校の先輩が上海から帰って来て毎回1〜2週間日本に滞在する。彼女は旦那さんの出張に共だって向こうで主婦業に励んでいる健気な女性だ。私と同級生2人と、それからもう一人先輩とで 彼女の帰国の時には会う機会をつくって5人集まるのが常となっている。 今日はその集いに指定された日だった。
上海帰りの先輩は新小岩にご実家のあるので、夜に集まるときは彼女の足便を考慮して中央線沿線の店を予約することが多い。今回もその例に漏れず、御茶ノ水駅から坂を下り駿河台の交差点へ差し掛かった辺りにある創作和食の店に集合することになっていた。
仕事帰りの足でそこへ向かった私は 初めての場所だったので道に迷い少々遅刻しての到着。先に店に落ち着いていた先輩2人には笑われ、同級生にはなじられた。見ると今回店の予約等面倒なことを請け負ってくれた同級生の子が来ていないようだ。
「…やっぱり彼女は無理そうなの?」
と尋ねると、先に来ていた同級生が苦笑いと共に肩をすくめて見せた。来ていない彼女はデザイン事務所でバリバリと働く仕事人。来ている方の子も本当はこんな時間に仕事が終わっている訳がない多忙な事務所にいるデザイナーなのだが、そろそろ転職をと考えて過日退職願を出したのだそうで 最近は用事のある時は悪びれずにさっさと出てくるという。 そんな相手に遅刻をなじられたのでは反論などできようはずもない。
取りあえず始めていましょうか、ということになり 幹事の到着を待たずに注文をし始める。面倒な事はさておき久しぶりのよもやま話を楽しもうと 誰もがそう思って近況を報告し合った。
予約を入れていたのが19時。予約の席なので2時間で追い出されてしまうのだが、幹事の彼女が20:30頃になってやっと到着した。それでも明日また出社しなくてはいけないらしく、すっきりしない顔を覗かせている。それでも店員が退座を促しに来るまでは その彼女の話を中心にして皆聞き手に回っていた。
先輩は少しの間でも顔が見られたのが嬉しかったのか 始終にこにこしていた。
店を出されたので近くの喫茶店にでも… と思ったものの、適当な店がなく 結局駅の前でしばらく立ち話を続ける。そうこうしているうちに終電の時刻が迫り、名残惜し気に解散となった。先輩2人は中央線でのぼり、私はくだり。同級生は一人丸の内線、一人は千代田線と 駅の改札で見事にバラバラになった。放射状に歩き出す5人の歩調がそれぞれに違っているのが印象に残る。
皆がそれぞれの道を それぞれの歩みで進んでいる。
そう思い知らされている気がした。
帰りに日付が変わったので16日が誕生日のRさんに「おめでとメール」を送った。 11月も半ば、星の見えない空の黒を見上げれば 冬がその気配をチラリと伺わせるかのように
乾いた風が頬をかする。
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