カタルシス
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2003年01月01日(水)  わたしの好きな人 

明けましておめでとう。
元旦は毎年恒例の親戚宅訪問。

と言っても別に大勢が集まるって訳じゃないし、嫌いな親戚な訳でもないし、
電車を使えば駅3つ、車を使えば15〜20分という近さに住んでいる大叔母(母方の祖母の姉)の家に 一家揃って遊びに行くって感覚で。

この時ばかりは人見知りの父も、出掛けてばかりの弟も、ちゃんと都合をつけてこの家を訪れる。我が家の決まった行事のようなものだけど、強制参加じゃないから別にすっぽかしたって厳密には問題ないもの。
でも みんな律儀に集まるのは、大叔母の人柄というか母の教えの賜物というか、要するにみんなこの家が好きなんだよね。

そこの娘さん(母の従妹)… といっても、もういい年齢したオバさんなんだけど、私にとっては小さな頃によく遊んでもらい、大人になってからも気安く話のできる大好きな“お姉さん”で、その彼女がお嫁に行ってからは 毎年元旦に大叔母の家に集まるのが唯一の再会の場になっている。

彼女がお嫁に行った先というのが、地域的にはウチと大叔母の家とちょうど三角形を結ぶような位置に当たる 近しい場所なんだけれども、地元の旧家で地主さんみたいな一族なんだ。旦那さんはその家の跡取りだったから彼女は家長の嫁として常に家を守っていないといけないらしい。おまけにそのご主人は結婚してから数年後に不治の病に倒れてしまって以来ずっと寝たきり状態。
その病気というのが、名称は知らないけれど徐々に四肢の筋力が衰えて、意識はあれども自力で動けない体になっていくって難病で、言葉も段々喋れなくなり、最近ではもう ほぼ植物状態といえた。そんなご主人を付ききりで毎日看病するのも、お嫁さんとしての彼女の日課になっているのだ。

明るくて、大らかで、時には豪快で、でも面倒見の良い優しいお姉さんが、そんな苦労を背負っていたと知ったのは物心ついてからのことで、それまでも何度も顔を合わせていたのに以前と何ら変わらない人柄で 楽しく相手をしてくれた彼女の身の上について 親がこっそり話ているのを漏れ聞くまでは、全然そんな事実に気付きもしなかった私。…器の違いを痛感した瞬間だ(涙)

そんでもって、ますます彼女が好きになったのは 言うまでもないこと。

毎年元日だけは家を空けることを許されているのだそうで、何で?と訊いたら 一族の長が住まう家なので親族がそこに集まるから、必ず家人が在宅している日なんだって。それに、年末に正月の準備をしっかりしているから、お節やおもてなしの料理・お酒等が充分にある訳。家の人はそれを運んで出していれば良いので「あなた出掛けても良ろしくてよ」ってなるらしい。
もちろん年末にそれらの準備を整えるのはお姉さんの仕事。

一年中そんだけ働いてもらえる休みが元日だけって、江戸時代の奉公人にだって盆暮れ正月・親の命日くらいには休みがもらえたってのに、全く涙なくしては語れぬ有様だ。それでもお姉さんが黙って従っているのはご主人や可愛い2人の息子のためだって解るから、やたらなことは言えないし、そもそも とやこう言える立場に私はいない。
大変だねー、って労いの言葉と共に お茶お入れしましょうか? 肩お揉みしましょうか? なんて冗談ごかすのが精一杯だ。

結婚するまで美容師さんとして働いていたお姉さん、時々家で息子さんの髪の微調整などをしているらしい。その息子兄弟も、上の子はうちの弟と同年で下の子はその2つ下。小さい頃はよく遊び相手になってあげたものだったが、最近はめっきり顔を合わせなくなった。今日も上の子だけが来ていて、ぎこちなくしているな〜と思っていたら、お年玉が目的だったようで 貰う物を貰ったらさっさと帰ってしまった(苦笑)お姉さんは気に病んでいるようだったけれど、大叔母にしてみたらお年玉目的でも孫が顔を見せに来てくれるのが嬉しいことだったようで、
「いいんだ いいんだ」って笑っていた。

下の子は人一倍のシャイというか、真面目で大人しく控え目な男の子に育った様子。
と、いうのも上の子は一族の中で「跡取り」として扱われていて我が儘放題な育ち方をしていたらしい。特にお祖父様は長男次男をハッキリ区別して接しているらしく、次男である下の子は絵に描いたような無視のされ方なんだそうで、お姉さんも大叔母も そのことをとても気にしているようだった。

結果、好きなように過ごしていた上の子は 髪を金に染め、バンドを組んでみたり 無免許でバイクを乗り回したり、更には高校を中退して左官職人の元でバイトをしながら単位制の学校に通ってみたりと、まさに波瀾万丈に振る舞って今に至っており、対する下の子は指定の制服を地味に着こなし、学力ランクの高い公立の高校へ入って真面目に勉学に励んでいる最中だ。

どっちが良いとか悪いとかではなくて、こうもかけ離れた様子には いっそ感心すらできてしまう。

子育ては親だけが頑張ってもダメなんだな〜… と「一族」という集団の怖さを垣間見た気になった。


今年もまた一年頑張ってね お姉さん。
私は、いや我が家はいつでも姉さんの味方だぜ!(涙)


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