バカ恋
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■ 二律背反 ■



悲しみが峠を越したのか、

其れとも開き直ったのか、

身体は思いのほか元気で、食欲もある。

此れほどの事をした意味が何処にあるのか、

アタシには未だ判らないけど。




きっとこの辛さは、男には理解できないのだろう。

シュウは昨夜、少しの間だったけど、

アタシを置いて何処かへ行った。

すぐに帰るから

そう言い残して、出掛けたシュウは、

すぐには帰らず、

時計の針が進む度にアタシの中の被害者意識が暴走を始めた。




取り残されたような不安。

愛されたい。

触れていてほしい。

傍にいてほしい。

昨夜のアタシは、ただ其れだけだった。




シュウが外出した事を悲しんだわけじゃない。

すぐに帰ると言ったのに、帰らなかったから怒ったわけじゃない。

一瞬でも離れたくなかった、其れだけだった。




暫くして帰ってきたシュウに、

「大事にされてない」とか「愛されてない」とか、

散々な事を言って困らせたけど、

そんな事如何だってよかった。

アタシは、自分でコントロール出来なくなった感情を、

シュウにぶちまけたかっただけだったのだから。




シュウがどんなに言葉を尽くしても、

どんなにアタシを大事にしてくれても、

どんなに愛情を注いでくれても、

アタシが背負ってしまった痛手は、

絶対に消えないし、無くならない。








昨日みたいに、どうにもならない思いに押し潰されそうな時、

またアタシは、

こうやって罪を天秤にかけて、

シュウを詰めたり、

自分を蔑んだり、

誰かを妬んだりするんだろうな。




全て甘んじて受ける覚悟を、

アタシは持ち合わせていなかったのだろうか。

中途半端な決意なら、

最初からしないほうがいい。


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