一緒にいたかった夜。


生きている意味がわからないからといって
それが消える理由になんて、なるわけがない。

あのときあたしが
自らを消すことができなかったのは怖かったからなんかじゃない。

彼の心に、一生残る傷をつけるのが嫌だったから。
あたしが消えることが、それ程のショックを与えられるかなんて
もうそんなふうにはほとんどおもえなかったけど。

でも、もしも万が一。
彼の心を呪縛してしまったら、って。

そうおもうとどうしても出来なかった。

あたしは彼を憎んでいたわけじゃなかったから。
だた好きで、愛されない自分のいる場所がわからなくなっただけ。


いつも誰かに必要とされたくて、誰かの為に生きていたくて。
誰かの存在理由になりたくて。

でも、だから、
あのとき彼に見捨てられるかもしれない、って
そうおもうとどうしたらぃぃのか、あたしはわかんなくなった。


元々“生きること”に執着なんかなくて

それでなくてもずっと疑問ばっかりだったから、

だから“生きたい”なんておもえなくなってた。



やっぱりあたしは誰の唯一にもなれないんだ、って。
そうおもえて仕方がなかった。

自分のアイデンティティーみたいなものを護ることができなくて。
それでも、諦められるほど大人になんかなれないくせに、
すべてを放り投げられるほど子供にもなれなかった。

被害者ぶってただけかな。



あんなに寂しい誕生日は、生まれてはじめてだったよ。



一度もロウソクの火を吹き消すこともなければ、
ケーキすら一口も食べなかった。

お誕生日にひとりなら、その当日にパーティしようね、
言ってくれたさくちゃんたちにも、
「一緒にいようよ」なんて待ち合わせまで決めてくれた姫にも、
ずっと「うちらがお祝いするから」なんて言ってくれてたマキにも

あたしはなにも言えなかった。
「ありがとう」さえ言えなければ、
かといって「助けて」なんて言うこともできなかった。


2年前、“あの人”が『なんでもない日』にした
あの夜よりもずっとずっと、あたしは独りぼっちだった。


どうしてもどうしてもどうしても、
あの夜だけは、どうしても彼に一緒にいてほしかった。
彼ひとりいなきゃ意味なんてなかった。

身勝手はわかってたのよ。
あんな態度とっておきながら。

でも、それでも、嘘でもぃぃから抱きしめてほしかった。

あの日だけは。


ほんとにプレゼントなんてほしくなかったのよ。

あたしが間際に言ったのは
嘘でも飾りでもなんでもなかったの。
強がりなんかじゃなかったの。

きみだけいればよかったんだ。ただそれだけで。
2006年08月05日(土)

魔法がとけるまで。 / ちぃ。

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