| 2007年10月21日(日) |
前防衛事務次官と軍需業者の癒着 |
「 不良な役人は、投票に行かぬ善良な市民によって選ばれる 」
ジョージ・ジーン・ネイサン ( アメリカの文芸批評家 )
Bad officials are elected by good citizens who do not vote.
George Jean Nathan
実は、投票率が半数を下回ると、民主主義は危機的な状況に陥りやすい。
選挙の度、投票率の低さが話題になるのは、そういった観点によるものだ。
近年、日本の選挙では、国政選挙で 50% 前後、地方選挙では 20% 〜 30% 台の低い投票率によるものが多く、それが普通になってきている。
たとえば、総投票数の半分を得て当選した人でさえ、その選挙の投票率が 20% だったとしたら、有権者の 10分の1 しか支持を得ていないのだ。
また、投票率の低い選挙では、組織票が結果を左右しやすく、一部の熱心な人たちにより、けして有権者の総意ではない人物が選ばれることもある。
政府は、その対策として、投票時間を長くしたり、不在者投票の条件を緩和したりしているが、なかなか、投票率の低下に歯止めをかけられない。
前回の参議院選挙も、56% という 「 過去、4番目に低い投票率 」 だったが、このままでは、よほど注目度の高い選挙でないと、向上は見込めない。
地方議員による汚職が多い実情と、地方選挙における投票率の低さには、強い因果関係があると指摘する識者もいるが、解決する良策がない。
たとえば、シンガポールの平均投票率は 96% だが、棄権した人は選挙人の名簿から名前が消され、復帰するには 3000円を支払わねばならない。
同じく投票率 96% のオーストラリアでは、棄権をすると即座に 4000円の罰金、ベルギーはさらに厳しく、6000円の罰金が徴収される。
他にも、多くの国々が 「 投票は、国民の権利であると同時に義務である 」 という理由から、棄権者に対する罰金制度を設けている。
結果、90% 以上の高い投票率を維持しているが、日本を含め先進諸国では、「 投票は強制されるものではない 」 という概念が強く、そうもいかない。
投票率の低い地域で、地元の有力企業と結びつきの深い候補者を立てると、いとも簡単に組織票の効果によって、当選することが多い。
組織票の恩恵を受けた議員は、当選後、見返りとして企業に便宜を図るといった 「 官民癒着の悪しき体質 」 が、そこから構築されていく。
冒頭の言葉が示した、「 投票に行かぬ善良な市民が選んだ不良役人 」 とは、まさに、そういった人物を指しており、その伝統は現在も変わらない。
まして、選挙という手続きすら踏まない官僚の場合は、不公正な民間企業との関係を暴くことが困難で、大部分は個人の良識に委ねられている。
ただ、あまり派手にやり過ぎると、利権を持たぬ同僚に内部告発されたり、企業側の監査が発端で名前の浮上する危険も、存在するようである。
前防衛事務次官だった 守屋 武昌 氏 が、防衛専門商社 山田洋行 の専務から、頻繁に 「 ゴルフ接待 」 を受けていた事実が判明した。
山田洋行 の年商 350億円のうち、大部分の発注元が防衛省であることを考えれば、「 官 」 と 「 業 」 の接近は、厳に慎まねばならない。
防衛省内部には、こうした事態を警戒し、「 業者との癒着を疑われるような接待の禁止 」 を定めた倫理規定もあるが、遵守されなかったらしい。
審議中の法案とは関係しないけれど、この問題を野党が政争に利用することは明白で、福田内閣にとっては、また、頭の痛い話になりそうだ。
海上補給法案など、国民の関心が防衛問題に向く最中、防衛利権を巡る癒着があったのか、他例はないのかなど、調査、説明が求められるだろう。
少し厄介なのは、他の省庁と違って、防衛行政は 「 安全保障上の機密が重視される 」 という特徴があり、すべてを公表し難い点である。
それは、「 外部からの監視の目が届き難い 」 という実情にも通じるので、曖昧な答弁をすると、たちまち、野党は容赦なく追及してくるはずだ。
癒着は断ちたいが、防衛省全体をガラス張りにして 「 国防の弱体化 」 を招く事態は避けることが望ましく、この問題は、意外と難易度が高い。
ここは、当事者に対し、慣例にないほどの厳罰を課して、他の防衛官僚への 「 みせしめ 」 にするのが、もっとも無難な対処ではないかと思う。
それぞれ、背負っている責任の軽重が違うのに、「 法の下の平等 」 を貫くのは不自然で、こういう悪徳官僚には厳罰で処するのが妥当である。
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