| 2008年03月01日(土) |
ロフト : パート 2350人を正社員に |
「 じっと目を見れば、真実と、美と、コンタクトレンズだけでなく、
能力の有無も見えてくるものだ 」
ローレンス・J・ピーター ( 教育学者 )
Competence, like truth, beauty and contact lenses, is in the eye of the beholder.
Laurence J. Peter
日本を 「 格差社会 」 だと思っている人は、明らかに勉強不足である。
あるいは、“ 格差 ” という言葉の意味を、広義に捉えすぎている。
たとえば、働けない事情があって生活保護を申請した場合、認められれば最低限の生活を営む費用として、月額16万円程度の金額が支給される。
その一方、ハローワークに行って検索すればわかるが、毎日、フルタイムで働いても15万円以下の手取りしか支払われない仕事が無数にある。
六本木ヒルズの上階に住んでいる人と、公園で段ボールに寝泊りする人の比較は、「 やってきた結果の差 」 であって 「 格差 」 とは言わない。
同じ仕事に就き、同じ成果を挙げながらも報酬が不平等だったりすれば、それは格差と呼ぶに相応しいが、それぞれに働きぶりは異なる。
むしろ前例のように、働いても、働かなくても 「 所得の格差がない 」 ことのほうが、国全体の問題として考えれば、憂慮すべきポイントではないか。
近年、ビジネスのグローバル化を推進する流れの中で、高度経済成長期には 「 護送船団方式 」 と呼ばれた “ 終身雇用 ” の仕組みが崩壊した。
労働者派遣法が緩和され、あらゆる業界にパート、アルバイト、派遣社員、契約社員などの不定期採用が取り入れられ、正社員の雇用が減っている。
これは、たとえばアメリカのように、外国人の移住が盛んで、人の出入りが多い国には適しているが、国土が狭く、単一民族の島国には無理がある。
日本の場合には、「 生産者も一消費者 」 であって、賃金を安くして企業が潤っても、消費者の購買力が落ちるので、その景気は長く続かない。
輸出に徹する企業はよいが、全体の賃金ベースが低下すると内需が落ちるのは必然なので、国内消費に期待する企業は、墓穴を掘る結果となる。
アメリカと友好的な関係を保つために、日本は数々の 「 外圧 」 を受け入れてきたが、中には、日本にとってプラスのものも、マイナスのものもある。
イラク戦争に関連する自衛隊の派兵や、インド洋での給油に税金が遣われることを騒ぐ人もいるが、それらは、さほど大きな負担ではない。
もっと懸念すべきことは、外圧によって労働派遣法が緩和させられ、結果的に全体的な労働力が 「 安売り 」 させられ、相場が崩れることだ。
成果配分方式や、実力主義を浸透させることに異存はないが、魅力のある職種に就ける割合が減らされ、若者の労働意欲を低下させてはならない。
非正規社員の雇用数増加は、いずれ、外資による 「 日本制圧 」 の片棒を担がされている危険があることを、各企業は心得ておく必要がある。
生活雑貨専門店を展開する 『 ロフト 』 では、パート、契約社員、正社員の3区分を撤廃し、パートの希望者全員を3月16日から正社員にする。
この企業には、2650人のパート従業員がおり、大半にあたる2350人が、正社員になることを希望しているという。
パートが悪いとは言わないけれど、正社員になれば、働き方次第で管理職などへ昇格できる道が開け、それで能力を開花させる人も多いだろう。
ニートやフリーターの増加に眉をひそめるだけではなく、この企業のように、前途ある若者に 「 活躍の舞台 」 を提供する姿勢が求められる。
外圧に抵抗して 「 鎖国 」 する必要はないが、日本経済の特性と、自立の維持を鑑みれば、非正規雇用の比率は抑えることが望ましい。
ちなみに、“ パート ” と “ アルバイト ” を混同している人も多いが、パートとは本来、「 通常の正社員よりも働く時間が短い労働のこと 」 を指す。
それに対しアルバイトは、「 本業を持ちながら、副業として行う労働のこと 」 で、学業という本業を持っている学生が働くと、アルバイトとなる。
主婦の場合は、家事を本業と言えなくもないが、一般的にパートと呼ばれることが多く、法的には、パートもアルバイトも同じ扱いになっている。
小売店や、外食産業などでは、ベテランのパートやアルバイトが、新入りの正社員以上の働きをしている例も多く、会って話すと、彼らの能力は高い。
私のように、19歳の学生アルバイトから 「 しっかりしてよね 」 と、お説教をされる経営者もいるし、能力のある人は、なかなか侮れないのである。
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