2008年05月05日(月) |
ミャンマーのサイクロン被害 : 犠牲者1万人超す恐れ |
「 時間の浪費は耐えがたい罰だ 」
チン・グァンシュー ( 中国の植物学者 )
Wasting time is an unbearable punishment.
Quin Guanshu
どれほど大金を支払っても、手に入らないものはある。
その一つが 「 時間 」 であり、だからこそ大事に扱わねばならない。
ミャンマー中南部を襲った大型サイクロンにより、一時、死者は4千人前後と伝えられたが、実際には1万人を超えるものと報じられている。
昨年の11月には、隣接するバングラディッシュでも、大型サイクロンの直撃で、4千人を超える死者、行方不明者の被害があった。
今回の被害は、それを大きく上回るもので、最大都市ヤンゴンなどを含む各地域では、10万人以上が家を失い、通行や通信も困難な状況だ。
ミャンマーは、昨年9月に日本人カメラマンの 長井 健司 さん が巻き添えになった 「 民主化デモ 」 に象徴される通り、軍事政権の支配が続いている。
そのため厄介なのは、被災地の窮状を知った諸外国が支援を申し出ても、物資や医療チームを送り込むことが容易でないという点である。
このままでは、時間が経つにつれ、食糧や水の不足が深刻な事態に陥り、二次災害や感染症などの影響で、さらなる被害の拡大も避けられない。
一刻を争う事態であるにもかかわらず、未だ軍事政権は、国連などによる被災者への支援活動を許可していないため、まるで見通しが立たない。
今後、支援を受け入れる可能性もあるが、災害復旧は 「 時間との勝負 」 によるところが大きく、無駄な時間の浪費は、多くの生命を奪う。
特に、われわれ関西人は、阪神大震災の際に 「 その教訓 」 を学んだが、思想や、外交政策の枠を超えて、迅速に支援を仰ぐことが肝要である。
インフラが整備され、民主的な日本でさえ、初期段階における対応の遅れが大きな損失を招いたわけで、ミャンマーの場合、その被害は甚大だ。
もともと昨年の民主化デモは、その前月、軍事政権がガソリンなど燃料費の大幅値上げを強行したことへの国民の反発が、騒動の発端だった。
その後、さらなる圧制で国民は発言の自由を奪われ、デモは鎮静化したが、燃料費の高騰が物価上昇を招き、以前より生活は圧迫されている。
今回の被害が困窮に追い討ちをかける中、軍事政権は5日、新憲法案への賛否を問う10日の国民投票を、予定通り実施する方針を示した。
軍の権力維持を担保する条項をちりばめた新憲法の成立を、多くの被災者が救援を求める現状で強行すれば、さらに、国民の反発が強まるだろう。
困窮を深める国民と、その心情を無視する軍事政権の対立が、抗議行動の再燃に結びつき、今後、また、昨年の悲劇が繰り返される不安もある。
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